経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

「君命に受けざる所あり」

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

企業経営において、経営者は戦略を策定して進むべき方向性を示す。企業理念や目標といわれるものである。これが明確でなければ、組織が迷走してしまい、目標の達成は難しい。こうして経営者が策定した戦略に沿って実行部隊の責任者が戦術を考え、実行するというのが、組織においての役割であると考える。
人数が極めて少ない組織においては、こうした戦略と戦術を経営者が一人で担うことになるのだが、組織の人数が増えれば、経営者だけの力では組織が機能しなくなる。そのため、戦術を実行する部下が必要になる。

成長する企業は、組織をつくり、それをまとめる責任者を置く。経営者は責任者が目標を達成するために、責任と権限を与える。しかし、上手く行かない組織では、経営者が戦術レベルに口を出して、戦術を潰してしまうことがある。
例えば、ある戦略の下にプロジェクトを組み、戦術を立案し、実行する。最初のうちは何も言わない経営者が、プロジェクトの進行が遅れている、あるいは、当初想定していた状況よりも思わしくないとからといって、いきなりプロジェクトの責任者を飛び越え、現場に口出しをする。

現場のことを理解していない経営者や上役が戦術に口を出しすることで、プロジェクトメンバーの士気は著しく低下し、さらに状況が悪化したり、プロジェクトそのものが頓挫したりするというような結果を招いてしまう。挙げ句の果てには、そうしてプロジェクトを頓挫させてしまった経営者が、「うちの社員は能力だけでなくモチベーションまで低い」などと外で発言してしまう。取引先や周りの経営者に自分の至らなさを公言し、社格まで落としてしまう。このようなケースは、案外多いものである。

孫子は「君命に受けざる所あり」という言葉を残している。部下が戦略の方向を間違えず、その範囲内で戦術を実行している限りにおいて、戦いの細部に干渉してはらなないという意味である。もし、現場の実情を理解できていない経営者がいたずらに口出しすれば、現場の指揮系統は混乱をきたすと示している。

つまり、経営者の指示であっても、現場の実情とズレている、戦略から外れている場合には、現場責任者は自らの責任の下で判断し行動すべきだということである。  経営者も、現場の実情を理解せずに、いたずらに現場に口出ししてはならない。部下を育てたいと思っている経営者なら、なおさらである。また、経営者と現場責任者との信頼関係も大きく影響するものだと思われる。経営者は普段から、幹部をはじめ部下との信頼関係を深めることに心を砕く努力を惜しまないで欲しい。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.133(2022年7月号)

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プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ) 
ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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