当世ビジネス芯話 ■編集人 宇野 秀史
「タイパ」って?
最近、「コスパ」や「タイパ」という言葉をよく耳にするようになった。「コスパ」は、コストパフォーマンスの略だということは理解できる。しかし、タイパを聞いた時には、イメージできなかった。どうやら、タイムパフォーマンスの略らしい。
若者言葉は、いつの時代にも話題になる。コスパもタイパも同じようなものだが、コスパやタイパという言葉が頻繁に使われることに対しては、どうも違和感を覚えてしまう。年を取り過ぎたのかと自問するが、そればかりではないように思う。
コストパフォーマンスを日本語に訳すと「費用対効果」となる。使った金でどれだけ得るものがあるのかということであろう。となると、タイパは「時間対効果」になる。ある時間内でどれだけの満足や効果を得ることができたか、ということである。
ビジネスの世界では、コスパやタイパが高い方が、より多くの利益を残すことができるわけだから、重要視するのは当然であろう。最小の投資で最大の効果を上げることを追求するのが企業活動であると考えれば、コスパやタイパが重要なのはある程度理解できる。
しかし、これを人間関係にまで当てはめられているとしたら、皆さんはどう思われるだろうか。人間関係の価値をコスパやタイパで測り始めたら良好な関係を築くことなどできないと思うが。そして怖いのは、この「〇〇対効果」の考え方が当たり前だと思う人が増えることだ。
メールに返信しない?
最近は、ビジネスメールのやり取りにおいて、返信をしない若者が増えていると聞き驚いた。例えば、Aさんが取引先の担当者であるBさんに販促の提案をメールで送る。すると、Bさんから「今回は難しい」という返事が返ってくる。このメールを受けたAさんは、次の提案につなげようと考え、メールを返す。この一往復半以上のやり取りが当たり前だと思っていたが、最近の若者の場合、Aさんは返信しないという。理由は、タイパが悪いからだそうだ。
タイパが悪いから返信しない。これを繰り返していると、どうなるのか。Bさんは、Aさんからの提案を重要視しなくなるだろう。そうなると、効果が出せなくなるAさんの考え方は、タイパが悪いということになるのではないか。
コスパやタイパを追求するのは、自分の都合を優先しているから出てくる発想だと考える。自分がもし相手の立場ならどう感じるのか。相手の物差しを理解し、その物差しと同じ尺度で考えることが重要なはずである。自分の都合を押し付けていては良い人脈を作ることなど望めない。極論すれば、自分の都合を捨てて相手になり切る考えと覚悟があれば、たいていの人との関係はできるし仕事も上手くいくはずである。コスパやタイパを基に考えていると無駄だと思われることを楽しむ余裕も必要であろう。
みなさんは、どう思われますか。
当世ビジネス芯話 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.154(2024年4月号)
プロフィール
宇野 秀史(うの ひでふみ) ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴り、経営者の知恵を後継者に伝える活動を行う。
近年は、田中家をテーマに研究を行い「田中家研究家」を自任。
URL https://www.chie-up.com
著書
『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)、
『田中の田中による田中のための本 第1巻』
『田中の田中による田中のための本 第2巻』(梓書院)
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