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待てますか?

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

ある方から、興味深い本を紹介していただいた。
50年以上前に書かれた組織論に関する本である。その中で、組織のリーダーの違いによって成果がどのように変わるかについて書かれたものがある。例えば、攻撃的なタイプのA氏と平和的なタイプのB氏の二人のリーダーで組織運営の成果がどのように変わるのかといったものだ。

A氏は、数字の目標を示し、それを達成するために部下に圧力をかけ続ける。数字至上主義である。リーダーとしての押し出しも強く、誰も逆らえないような雰囲気を持っているし、実際、立場を利用して人を威圧するような言動をとる。
いわゆる「強力なリーダーシップを発揮する人」もこういうタイプに含まれる場合があるだろう。

A氏は、短期間で売上など業績を上げる。そのため、上役からの評価も高い。
しかし、効果は長続きしない。A氏の組織は徐々に雰囲気が悪くなり、モラルも低下する。
皆、A氏からの圧力に疲れはじめ、お互いの事を気遣う余裕もなくなる。スタッフは病気がちになり、遅刻や早退、欠勤が増える。生産性は下がり、退職者も増える。
マンパワーが不足し業績は低下、おまけに採用コストと教育コストが上がり、利益を圧迫するのだ。

B氏は、目標数字を明確にするのはA氏と同じである。しかし、A氏が率いる組織のように短期間で売上を伸ばすことはできない。B氏が大事にするのは、数字以上に自分たちの仕事の役割と価値を理解し方向性が一致するように組織内のコミュニケーションを図ることだった。
お互いの仕事を気遣い、協力する。仕事も工夫し効率化や生産性向上のためにアイディアも集まる。そういう風土が出来てくると、自発的に仕事に取り組むようになり、業績も向上する。欠勤者や退職者も減る。

こうしたことを50年以上も前に検証しようとしたことに驚いたが、それらの検証は今の組織にも当てはまると思う。

戦争で国内の産業が壊滅的な打撃を受け、職場が激減した。しかし、復興が進むにしたがい景気も良くなった。モノが不足していた時代は、作れば売れたから、一所懸命働けば生活はよくなった。先に希望があったから、上司からの圧力にも耐えた。

しかし、モノ余りで売れない時代、さらに人手不足の時代に、上司の圧力に耐え続ける必要はなくなった。こうした時代背景から考えると、今の時代に求められるリーダー像はB氏タイプが多くなっているように感じる。
B氏型のリーダーには「待つ力」が必要である。しかし、待つことができる人は案外少ない。
自己顕示欲が強いリーダーには特に少ないように思うが、いかがであろうか。
人間について知らないと、待つこともできないだろう。
「待っている暇など、忙しい現代では無理」だという声が聞こえてきそうだが、こうした時代だからこそ、リーダーには待つ力が必要なのではないかと考える。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.101(2019年11月号)

プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ) 
ビス・ナビ編集人

昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

コメント

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