経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

従業員の幸せ実現度が企業に問われる

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

人口減少が深刻な人手不足という問題となって企業を苦しめている。特に、中小企業は人材確保が難しく今後に不安を抱いている経営者も多いことだろう。ITが発達して人の代わりに業務を行う領域が増えれば、人手不足の問題は解決するという声も聞く。確かに、全体的な人手不足は解消される方向に進むのだろうが、企業個別に考えると楽観視できるとも思えない。

通信手段や媒体が発達した今、個人レベルでマスコミと同じように様々な情報を発信、収集できるようになった。その分、企業を見る目が厳しくなってきたということもいえる。経営者が何を求め、企業はどのような風土の下に事業を行っているのか。そうした目に見えない理念や企業文化がこれまで以上に注視されるようになると思われる。

先日、テレビで岩手県二戸市の株式会社小松製菓が紹介されていた。同社は、地元の伝統菓子・南部せんべいで50%のシェアを誇るトップメーカーである。創業は戦後の混乱が続く昭和23年に現会長・小松務の母シキが個人事業でスタートした。母の跡を継いでだのが、現会長である小松務氏だ。務氏は、バブル景気に乗り積極的に店舗を出店し工場も拡張するなど攻めの経営で事業の拡大を図った。しかし、拡大に伴い投資したものがその後の経営を圧迫し、会社存続の危機を感じるまでに業績が落ち込む。

務氏は、会社を立て直す際、母シキの時代に会社が成長したのは従業員を大事にする母の姿勢があったからだったと思い、業績重視から従業員重視へと舵を切った。その結果が、現在の同社の成長につながったのだが、務氏の従業員に対する思いと行動には頭が下がった。
例えば、業界に先駆けて、定年を引き上げた。その後は、希望すればいつまででも働ける制度を整え、退職者が働ける場所まで作った。子供を幼稚園や保育園に通わせる母親には、最大で月1万円の補助金を支給する。「社員の誕生会」や「社員へのお歳暮」も欠かさない。圧巻だったのは、退職者を年に2回、食事に招待し、そこで「年金」と称して現金を手渡す。これを80歳になるまで続けるというのだ。

従業員満足度を追求する企業は多いが、ここまで従業員の幸せを追求する会社があるだろうか。従業員が働く場や働く事に幸せを感じる同社では、様々なヒット商品を生み出すアイデアが生まれる。幸せを感じる従業員は仕事で持てる力を発揮するからだろう。従業員の従業員の幸せを追求し続ける務氏の姿勢は、これからの企業経営に欠かせないものではないだろうか。

求職者から選ばれる時代になった今、従業員の幸せについて経営者が真剣に向き合うことが求められるようになったと改めて感じている。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.103(2020年1月号)

プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ) 
ビス・ナビ編集人

昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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