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他人の慶事を本気で祝えるか

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

寄り添うことが大事

「祝い事には遅れてもいい。ただし、葬式には真っ先に駆け付けろ。本当に人が悲しんでいる時に寄り添ってやることが大事だ」
これは、人の心を掴む天才と言われた、故田中角栄元首相の有名な言葉だ。肉親の死に直面している時、人の情けは心に沁みる。本当にありがたいと思うものである。その気持ちが強ければ、信頼の対象にもなる。角栄氏は、人間心理を知り抜きそれを実践した人だった。ただ、そこに損得の気持ちが優先した行為なら簡単に見透かされ、逆に仇にもなろう。

葬儀に駆け付ける角栄氏には、それが感じられなかったという。どんなに忙しくても、葬儀には真っ先に駆け付けた。それほど、人の死と遺族に寄り添うことを重視した。その姿勢は、政敵と言われる人物やその肉親の死に際しても、変わることはなかったといわれる。角栄氏が率いる田中軍団と言われた最大派閥のメンバーばかりか、他派閥、他の政党、官僚にも角栄氏の情けに心を掴まれた人は大勢いたようだ。
人との関係が希薄になったといわれて久しい今日、確かに葬儀に人が集まらなくなった。だからといって葬儀の重要度が落ちたわけではない。今でも遺族との絆をつなぐものであると考える。

慶事の共有は連帯感を醸成する

では、慶事はどうか。他人が成功したり、表彰されたりすることに対して、心から祝うことができるかどうか。友人であっても案外難しいと感じるかもしれない。相手がライバル関係にあるような場合は、なおさらだろう。
この他人の慶事を心から祝うことができる人は成功者に多いと、これまでの経験から感じている。他人と自分を比べて、自分の価値を図ろうとするのではなく、自分のやるべきことに正対している人は、他人の慶事を自分の事のように喜ぶことができるのではないだろうか。「なぜ、あの人が評価されるのか」と愚痴をこぼすよりも、「自分もあの人のように夢を叶えよう」「次は、自分の番だ」と思える人は、事業でも人生でも成功しているように思う。他人の喜びを心から喜べる人は、魅力的に見えるし周りに応援者も集まってくるはずだ。

豊かな信頼関係を築き、維持するという考えで冠婚葬祭を見てみると、葬儀に参列することは、遺族との信頼関係を築くことになるのではなかろうか。一方、他人の慶事を祝うことは、その人との連帯感を醸成する効果があるように感じる。人は同じ時間や体験を共有すると、親近感を抱きやすくなる。自分の喜びを自分と同じように喜んでくれる相手に対して、好意や連帯感を抱くのは当然のことのように思える。
自分にとって損か得かという考えではなく、「自分がされて嬉しいことを人にもする」という考え方が、長い目で見ると自分自身に良い結果をもたらしてくれると言えるだろう。組織のトップを務める人には、心にとめておいていただきたいものである。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.150(2023年12月号)

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プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴り、経営者の知恵を後継者に伝える活動を行う。
近年は、田中家をテーマに研究を行い「田中家研究家」を自任。

著書
『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)、
田中の田中による田中のための本 第1巻 『田中の田中による田中のための本 第2巻』(梓書院)

URL https://www.chie-up.com

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