経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

コロナで事業承継が進む?

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

新型コロナウイルスは、ビジネスや生活に様々な変化をもたらした。日本は先進国の中でIT化が遅れており、それが企業の生産性や国際的な競争力の低さにつながっていると指摘されてきた。企業だけでなく、行政においても紙の書類を重視しデジタル化できずにいた。そこへ、コロナ問題が起き、リモートワークやオンライン会議などを導入せざるを得ない状況となった。

結果として、中小企業においてもデジタル化の波が押し寄せた。つい数か月前まで、対面でなければ仕事にならないと言っていた人たちが、私自身もその中に入っていた、実際にリモートワークやオンラインミーティングを使ってみると、その便利さに、それまでの認識を大きく改めたはずである。

コロナ禍で、興味深い変化もあった。事業承継である。帝国データバンクの調査によると、2019年の社長の平均年齢は五九・九歳で、高齢化が進み過去最高となった。上場企業でも58.7歳であった。
IT化による経済のグローバル化や複雑化、スピード化など企業を取り巻く環境は激しく変化している。
そうした時代を企業が生き抜くためには、経営者の若返りが必要だと指摘されてきたと思う。海外では経営者の若返りが進んでいるように感じるが、日本はまだ高齢化が進んでいる。

ところが、コロナが日本企業の事業承継を後押ししている事例もあるようだ。コロナ問題は、人々の生活スタイルや企業の働き方、営業手法などにおいて変化することを求めた。これまでの成功法則が通用しなくなったと感じた経営者が、若い経営者でなければこれからの時代の変化に対応できないと後継者へバトンタッチするきっかけになったともいわれる。

通常、事業承継が行われても変わるのは社長であって、それまで先代社長の脇を固めていた重臣たちは依然として経営の中枢にいることが多い。すると、重臣たちは、何かにつけ「先代はこうだった」と指摘する。新社長は実力が伴わないから、重臣たちの意見に従い、思い切ったことができない。
しかし、今回のように先が見えない非常事態に後継者に譲れば、重臣たちもどうすればよいか自信を無くしているため、新しい考えや取り組みを思い切ってできるだろう。
しかも、仮に改革や挑戦がうまくいかなかったとしても、内部からの批判も少ないだろう。

こうしたことを考えた経営者が、事業承継にはいい機会だと思っても不思議ではない。
高齢化が指摘されてきた日本企業の若返りが意外と進むかもしれない。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.113(2020年11月号)

➤ 他の「当世ビジネス芯話」の記事を読む

プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

コメント

タイトルとURLをコピーしました