経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

苦しい時こそ必死で笑おう

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

新型コロナウイルスの感染拡大で、経済は大きなダメージを受けている。これまでに経験したことのないような試練に先行きの見通しが立たず、不安を抱いている経営者も多い。こういう時だからこそ、トップは笑うべきではなかろうか。トップが不安な顔をしていては、部下は、安心して仕事に集中できない。苦しい時こそ、笑うことが大事である。

医学や科学の発達により、人間の脳の働きや神秘が明らかになって来た。イメージすると体にどのような影響を与えるかも、徐々に分かってきている。例えば、スポーツ選手はイメージトレーニングを行う。自分のレースや戦で勝つシーンをイメージする。脳は想像したことを実現しようとして、思考や筋肉、神経などを使って、イメージしたものを現実化しようとするようだ。あるドクターが、アスリートに自分がレースで走るイメージをしてもらい、その時の筋肉の動きを測定したところ、実際に走っている時と同じような動きをしたという報告もある。

人間は、想像したものを実現する力を持っている。例えば、実際の体験が数年や数十年前のことであっても、人間の脳は想像するだけで、それが今、実際に起きているかのように反応する。だから、過去の嫌なことを思い出しただけで、気分が沈んだり、胃や頭が痛くなったりするのだ。これは、未来のことに対しても同じだという。まだ実現していないことでも、楽しいことをイメージすると、気分が良くなるし体の調子も良くなる。

発した言葉や行動が、自分に影響を与えることもわかってきた。例えば、食事中に子供がふざけて食べ物や飲み物をこぼしてしまう。それに対して親が怒る。よく見かける光景である。この時、子どもを怒っている親は、次第に自分の怒りをコントロールできなくなり、怒り方がエスカレートすることがある。組織でいえば、部下の失態を上司が叱責する。怒っているうちに、怒りが増してきて、さらに部下を怒ってしまう。この時に、怒っている親や上司の脳は、自分が発している怒りの言葉を自分に向けられていると受け取る。相手を怒っているはずなのに、自分が怒られていると錯覚するわけだ。そうなると、気分が良いはずはない。怒りが収まらないのも当然かもしれない。

つまり、自分が実現したい夢や目標を既に達成したというイメージを持ち、言葉を発したり行動したりすることが大事だということである。良いイメージを持ち、良い言葉と行動をすることで現実の世界がイメージ通りになる。反対に悪いイメージを持ち、悪い言葉と行動を続けていると、イメージ通りの悪い結果を手に入れることになる。 だから、新型コロナウイルスという見えない敵に負けるイメージではなく、ウイルスに負けない、前向きなイメージと行動が必要なのだ。そのためにできることが、まず笑うことだ。苦しい時こそ、必死に笑おう。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.106(2020年4月号)

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プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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