経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

素直さが大事。素直さが難しい。

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

最近、中小企業の経営者と話す話題の中で、特に多いのが人手不足の問題である。大半が自社の人手が足りないので、募集広告などの予算を増やすがなかなか人材が集まらないという悩みだ。近年は転職に対する意識も変わり、昔のように1つの会社で定年まで勤めあげるという考えはなくなってきている。企業の寿命が短くなっている時代背景を考えると、致し方ないところでもあるように思えるが。

 高い費用と労力をかけてやっと人材を確保し、熱心に仕事を教えようとしても長続きしないという声も聞く。中小企業にとっては、本当に厳しい時代であろう。このような時代、企業はどのような人材を求めているのだろうか。技術や専門的な知識を持った人や営業実績を上げてきた人など、即戦力となる人だろうか。それとも、まったく経験のない新卒者だろうか。会社の規模や業種、今後の展開などによっても求める人材の資質や能力は変わってくるのかもしれない。

 この疑問を経営者に直接ぶつけると、「素直さ」を重視している経営者が多いように感じる。知識や技術、ノウハウは本人の努力によって獲得することができるものだが、素直さというのは非常に大きな資質であるように感じるし、素直でいることは非常に難しい。

 漢方医で安岡正篤氏の直弟子である寺師睦宗氏は、自身の著書の中で、いくら師匠が素晴らしくても、教えを受け取る側がきちんと吸収しなければ、何にもならないと前置きした後に、「安岡先生は、『受け継ぐためには、嬰童(えいどう)でなくてはならない』とよく語られた。嬰童とは、赤ん坊のことで、何かを受け継ごうとするとき、受け手の側は、赤ん坊のように純粋無垢な心、素直な心が必要であるということだ」と語っている。 

 言われたこと、教えられたことを素直に受け取り、その通りに実行する。このことが自然にできれば、仕事の能力が高まるのも早いだろう。また、組織で働く以上は、やはり、同僚や上司、取引先など関係者から好かれるに越したことはない。好かれれば、仕事を頼まれる。仕事が増えれば、スピードも上がる。そうやってどんどん仕事を覚えるようになる。周りに好かれれば、人脈が出来て情報も入ってくるようになる。素直である効果は、かなり大きいといえる。多くの中小企業の経営者が「素直さ」を重視しているのもうなずける。

 我が身を振り返ってみると、素直であることの大切さは理解しているが、素直であることの難しさも痛感している。年齢を重ねるに従って、素直な部分が小さくなっているようにも感じるし、これは確かだろう。人として仕事人として一生成長していこうと考えたら、素直な部分を大きくするための努力が必要だと改めて感じる。年をとっても素直さを取り戻す方法や素直な子供、素直な社会人を育むための研究をしてみたいとも思っている。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.102(2019年12月号)

プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ) 
ビス・ナビ編集人

昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

コメント

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