当世ビジネス芯話 ■編集人 宇野 秀史
デジタル社会になって今までのやり方や価値観では通用しなくなったといわれるが、やはりそれは正解ではないように思えて仕方がない。確かに、様々な分野がデジタル化によって、経営の効率化やスピードアップを図ることができるのは間違いない。RPAなどというロボットが人の仕事を自動でやってくれる便利なツールも安価で使える時代である。
デジタルというものは本来、道具である。我々は、道具に振り回されているだけではないかと思うことが増えている。道具を使いこなすことが成功のポイントであるかのように強調されるのは、いささか腑に落ちない。これからの時代、道具を使う器用さ以上に何かを「やる抜く力」が求められるのではないだろうか。経営者や組織のリーダーには、このやり抜く力がより重要になると考える。
安岡正篤氏は、「知識・見識・胆識」の三識について説いた。知識とは情報。知識を得るにはインターネットを活用すれば簡単に得ることができる。見識は、物事の善悪を判断する力である。知識と経験によって、この力を養うことはできる。そして、胆識とはやり抜く力のことである。
見識の高い人は散見されるが、胆識を持った人となると少ない。何かを成し遂げた人やオリンピック選手に選ばれる人たちなどは、この胆識を持ち合わせているのだと思われる。やり抜く力、胆識は、生まれ持った個人の資質という人もいるが、教育などでその力を高めることは可能だと考えられてもいる。 仕事においても同様である。経営者はもちろん、リーダーがやり抜く力を高められるような教育とやり抜く企業風土の醸成など、個人が内側から鍛えられる仕組みと企業風土、文化としてやり抜くことを評価する外側の環境整備を推し進めることが、今、企業に求められている重要な課題であると考えるが、いかがであろうか。
当世ビジネス芯話 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.123(2021年9月号)
プロフィール
宇野 秀史(うの ひでふみ) ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。
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