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「ありがとう」を言おう

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

先日、新型コロナウイルス感染問題の話題のなかで、皆が自粛するために家などに引きこもらざるを得なくなるとイライラが溜まってしまうという話になった。SNSなどでも、匿名性を利用して他人の言動を誹謗中傷するケースが多いようだが、これも自粛によるイライラのせいなのだろうか。だからといって、他人を攻撃していい理由にはならない。

なぜ、他人に悪口をいうのか。それも、自分とは直接関係がないにも関わらず。個人では優しい人たちが集団になると攻撃的になることはある。いじめ問題もそうであろう。集団の中にいると、人は自分よりも弱い人を攻撃したり、特定の人を攻撃したりすることがあるようだが、これは、自分への攻撃を避けるための行動の1つであるようにも思われる。他人の悪口を言ったり、攻撃したりすることが、巡り巡って自分の価値を下げるということには思いが至らないのであろうか。

ソーシャルディスタンスなどという言葉が躍って、物理的な距離だけでなく心の距離まで遠ざけているような風潮に疑問を抱いてしまうのは、自分だけだろうか。社内でも家庭でも、こういう時だからこそ、もっと心が寄り添うよう工夫したいものである。

私は、斎藤一人さんの本を良く読む。斎藤さんは、難しいことを我々にも分かるように説明してくれる。簡単なことを難しく表現するのは、それほど難しくはない。難しいことを、誰にでもわかるように簡単に表現するのは、とても難しい。斎藤さんは、哲学書で難しく表現されていることを、分かりやすく解説してくれる。

その斎藤さんが、自身の著書の中で、「ありがとうゲームをしよう」と書いている。「ありがとう」という言葉は、当たり前の反対である。人に何かをしてもらうことが当たり前だと思ってしまうと、そこに感謝の気持ちがなくなる。社員が毎日働いてくれることや毎月決まった給料をもらえること、蛇口をひねれば水が出てくること、今の時代や日本で生活しているから当たり前だと錯覚しているが、本当は有り難いことであるはずだ。

ありがとうごいう言葉は、人の気持ちをやさしくするようだ。「ありがとう」と言われた人だけでなく、言った本人もやさしい気持ちになれる。「ありがとう」が言えるようになったら、今度は、人から「ありがとう」を言われるようにしようと書いている。こちらは、ぐっとハードルが上がる。毎日10人に「ありがとう」と言われるようになるには、かなりの努力が必要になると思われるだろう。確かに、意識しないと難しいかもしれない。しかし、人に笑顔で手助けしたい、人を褒めることでも、相手は喜んでくれる。

非常事態宣言は一旦、解除された。しかし、落ち込んだ経済を立て直すには大変な労力が必要になる。しかも、第2波、第3波の可能性もある。経済は気だともいわれるように、1人ひとりの心の在り様が経済に反映される。だから、みんなが前向きになれるように、「ありがとうゲーム」をしませんか。まずは、家庭や職場で取り組んでみてはいかがでしょうか。投資がいらない大きな改善になると思います。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.108(2020年6月号)

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プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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