当世ビジネス芯話 ■編集人 宇野 秀史
国内で新型コロナウイルスの感染拡大がはじまって、2年が経とうとしている。感染防止のために対面での接触を極力控え、オンラインでの商談やミーティングを奨励された。
その結果、最初は戸惑いながらもズームなどを使ってオンラインでのやり取りを行う企業が増えた。イベントもオンラインでのライブ配信などが可能になり、デジタル社会の新たな可能性を感じることもできた。
そうやって、次第にリモートでのやり取りに慣れてくると、オンラインでの接客や商談も違和感なくできるようになった。大規模なオンライン商談会なども開催されるようになり、実績を上げているようだ。直接会う必要もないのに時間とコストをかけて対面していたことが無駄であるように思えたものだ。
しかし、2年が経って思うことは、対面の重要性である。オンラインでのやり取りは、お互いの顔が見え、資料の共有などもできる。場所を選ばないため、通信環境さえ整っていれば、やり取りができる。こんな便利なことはない。
それでも、直接会って話さないと大事なことは伝わらないということを改めて認識したものだ。
メールやSNS、zoomなどでは、セキュリティ対策を講じているとはいっても、ネットで外の世界とつながっているということは、まったく関係ないところから、個人の情報やネットワークにアクセスすることができるということにもなる。それだけに、やはり不安はぬぐえない。
やはり、大事なことは対面でなければ、怖くて話せないということだろう。ある経営者は、相手を納得させるには2メートル以内の距離に入ることが重要だと語った。2メートルまで近づくと、表情や息遣いがわかる。そこから生まれる空気感が伝わってくる。
本当に価値のある情報は、人から入ってくる。
人の頭の中には、今の情報と未来の情報が入っている。
そうした人の情報にアクセスするには、対面で会話する必要があるのだ。ネット社会のこれからは、ますます対面の重要性は高まると思われる。
当世ビジネス芯話 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.124(2021年10月号)
プロフィール
宇野 秀史(うの ひでふみ) ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。
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