絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
三兄弟の末っ子ティッチ。兄と姉がいる。今月の絵本の主人公だ。この作品はシリーズになっていて、その中から「きれいずきティッチ」。選んだ。
シリーズの他の絵本は、姉と兄よりどれだけ幼い存在なのか、持っているものや着るものなどを通して比較の表現で描かれている。しかし面白いことに、結局ティッチはいつもラッキーという展開となる。彼は小さくても読み手である私たちには大きな存在だ。
今日ご紹介する絵本は少し趣が違う。きれい好きな整理整頓されたティッチの部屋を見習うように、母親は散らかり放題の姉と兄の部屋を片付けるようにいう。ティッチは自ら進んで手伝いを申し出る。
姉が、大きくなったからもう遊ばないと言って捨てるものを、「ぼくはまだおおきくなってないよ」と全部もらい受けて、自分の部屋へ運び入れる。
次に兄の部屋。古い宇宙服もカウボーイの衣装も小さくなったから捨てよう‥「ぼくには まだちいさくなってないよ」と、もらい受ける。
この調子で、「まだぼくは遊んでない」「まだ遊べる」という理由で増えていくおさがり。
二人の部屋はすっきり。でもティッチの部屋は?
ご想像通り、二人の要らなくなったものでベッドさえ見えなくなる。決して姉と兄が押し付けたのではない。自ら進んで選んだ結果。
ティッチはきれい好きだから整理整頓された部屋だったわけではなく、ただ、過去が姉と兄より長くなかっただけだとわかる。生きた年月の比較なのだ。
ものを、右から左に動かすだけの片づけ。これって「あるある」だ。組織にも生活の場にも。
この絵と物語をみて、何を思うか、何を感じるか、具体的に何をイメージするか。チームでディスカッションにどうだろう。
マネジメントの父と言われるドラッカー博士の『経営者の条件』に、「最も重要なことに集中せよ」とある。「集中のための第1原則は、生産性でなくなった過去のものを捨てることである」と。
ティッチは、廃棄されるものの中に価値を見出したが、やがてすぐそれはティッチの成長と共にただのゴミになるだろう。こんな現象どこでも見ることができる。
「成果を期待できなくなったものを捨てることによって過去への奉仕を減らしていかなければならない」
多少の改善ではなく、根本からの見直しが必要な廃棄。私には読むたびに胸が痛む絵本でもある。
『きれいずきティッチ』
作・絵: パット・ハッチンス
訳: 星川 菜津代
出版社: 童話館出版
発行:1996年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.152(2024年2月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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