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『サンサロようふく店』

絵本に学ぶ仕事術

絵本に学ぶ仕事術  ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子

今月の絵本の舞台は韓国。3代続く洋服店の歴史を描いた、町の三叉路にある『サンサロ洋服店』の絵本から。
登場人物は、擬人化された犬たちで、ブルドックに、プードル、キャバリアに、ボクサー。主人公はビーグルだろうか・・当時の生活風景と共に観察が楽しい絵本だ。

その昔、誰もが民族衣装を着ていたころ、洋服という新しい文化が入ってきた。みんな店を覗き込むようにして歩いていく。そしてついにお客がやってきた。心を込めて丁寧に仕立てる。その仕事ぶりはたちまちお客の心をつかみ大評判になって繁盛していく。

時は進み、2代目の歴史が戦後の再興と共に始まる。初代から教えられたのは、仕事の心構えと、生地の選びから仕上げまで。厳しい訓練を受け、父にも負けない店になる。このころには、誰もが大切な日には洋服を着るようになっていた。記念日、始まりの日にお祝いの日。すっかり洋服は日常なのだ。周辺は同じ店が増えていき、人々の生活も環境も変わってきた。洋服店の周りも、空が小さく見えるくらいビルがいくつも立ち並び、みんな時間ばかりに縛られる。似たような大量生産の洋服も手軽に手に入るようになった。その中でも人気店のサンサロ洋服店。ブランドになっている。

そして、3代目の時代。時代と共に手縫いは古臭いものになっていく。「変わらなければ。伝統の技術だけでは生き残れない。かといって、機械的な仕事もしたくない」。今を生きるためには、受け継いだ「世界で1つしかない特別な洋服を一針一針心をこめて作る」を守ること。そして、時代の変化よって変わる一人一人の生き方に寄り添ったオンリーワンの仕事をし続けること。

この絵本をめくりながら、同じように何代も続く企業を思い出した。どの事業も、創業の時代も、引き継ぐタイミング、その時の状況もさまざま。しかし、共通しているのは、変わらない不易流行の生き方がある。そこに信条がある。 初代、2代目、3代目と、時代ごとに違う絵本の背景色が、徐々に明るくなっているのは未来へのエールなのか。さらにシネマ調の色彩が、映画のように胸に残り、事業を受け継いだあの人に、これから引き継ぐあの人に贈りたくなった。

『サンサロようふく店』
作・絵: アン・ゼソン
 訳 :林 木林
出版社: TOY Publishing

「絵本に学ぶ仕事術®」   Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.133(2022年7月号)

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プロフィール

三宅 美穂子(みやけ みほこ) 
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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