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『かぜはどこにいくの』

絵本に学ぶ仕事術

絵本に学ぶ仕事術  ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子

2023年最後の絵本に選んだ『かぜはどこにいくの』。本文全ページがモノクロで描かれている。 
確かに色はないけれど、鉛筆の繊細なタッチと、丁寧に選ばれた言葉によって彩られ、あらゆる色が想像できてくる。
さらに、読み終わってもう一度表紙を見ると、テーマの主題は、唯一カラーである表紙に込められていることに気づく。すると、またじわじわと、お話を思い出し、余韻も楽しむことができる。何度も味わえる絵本だ。

お話は、小さな男の子の「どうして?」に母親が優しく答えるようにして進む。
「どうして、ひるは おしまいになって しまうの?」「夜が始められるようによ」夜の始まりの月を指して答えると、「ひるが おしまいになったら、お日さまは どこへ いっちゃうの?」と、母親の答えによって男の子の世界が広がっていく。

「かぜはやんだらどこにいくの?」…たんぽぽのふわふわは? 道は? 山はてっぺんまでいったら次は? 波は? 雨は? 木の葉は?
おしまいになるものは何もないと、男の子が気づくまでこの質問が続いていく。

母親は、「ひるはおしまいにはならないわ。べつのところで またはじまるの。そして、お日さまは、そこを てらすのよ。おしまいに なってしまうものは なんにもないの。べつのばしょで、べつのかたちで はじまるだけのこと」(本文より)と。

風はここでやんでも、遠くへ吹いていって別の場所で木を揺らすし、たんぽぽの綿毛も別の場所で新しく花を咲かせる。秋が終わると冬が始まり、冬が終わると春が始まる。この本質を捉えた優しさあふれる回答に、何度読んでも感動してしまう私がいる。
そもそも、終わりなんてないのだ。絵本では、それを(ずっと続く)「新しいはじまり」「次のはじまり」「別のはじまり」と表現している。これまで、世界はずっと続いてきたし、続いていくのだ。

今年と来年。それは、暦の上の終わりと始まりというだけのこと。2024年のはじまりはすでに始まっていて、いきなり何もかも全く違う世界からはじまるわけではない。
 だから、残り数日であったとしても、2024年のはじまりのための今年の終わり方が大切。続いているということは、歩いてきたとおりに始まるのだから。
 こんなことを、大切な人と分かち合える絵本を、来年のために贈りたい。

『かぜはどこにいくの』
 作 : シャーロット・ゾロトウ
 絵 : ノッツ・ハワード
 訳 : 松岡 享子
出版社: 偕成社
発 行:1981年

「絵本に学ぶ仕事術®」   Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.149(2023年11月号)

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プロフィール

三宅 未穂子(みやけ みほこ) 
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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