絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子
Amazonに「日本ストア」という、日本国内のものづくり販売事業者を支援するサービスがある。これは、Amazon側のコンセプトに合致していることを条件に、個別に招待をした出品者のみが掲載される特別な紹介ページだ。「セーラーストーリー」という。
このように、自社ブランドや理念をオリジナルシナリオで伝える手法は、今や大手に限らず多くの事業者が用いていて、物語で伝えることがいかに効果的かがわかる。
一方で、物語(絵本)に含まれている仕事術をチームメンバーと読み解き、自分事と捉えることで共通認識を深めるヒントにできることを綴っているのがこのエッセイだ。物語をどう読むか!の可能性について広めたいと思っている。
今月は、治療の日々を海賊の宝さがしに置き換えて、苦しいや悲しいや寂しいといった感情さえも、人生をたくましくしなやかに生きる希望に変える「ぼく」が語るお話を紹介したい。
お話は、一人称のナレーション型で進むナラティブの手法。語り手の体験を、自分と重ねて読めるので、小さなこどもたちには効果的に伝わる。
「ママは、「カニなんてへっちゃら号」にのって、宝島を目指す海賊クルーの一員。船では大きな波や敵と戦っている。だから帰ってきても船酔いがすごくてご飯を食べれないときだってある。家にいるときはベットにいることが多い。それでもママは勇敢だ。ある時、宝島がやっとみつかった。とうとう戦いに勝ったのだ・・」
どうだろう。この短い紹介だけでも、過酷な抗ガン治療との戦いが見えてくる。船は病院、海賊は医療チーム。
ぼくもさみしさや甘えたい気持ちと戦っている。その絵の表現が、暗く重くならない。ママは赤い上着。海賊のクルーは白。モノトーンを含んだ数色に限定された表現は、現実だけどそうでない別の世界を想像するに十分だ。ぼくの物語に、未来への勇気の明るさと強さを絵からも読むことができる。
この絵本は、札幌のクライアントである学校法人理事長から推薦いただいた。親子を見続け、子育ての環境づくりに日々挑んでいる彼女だからこそ意味が深くなる。
ああ、伝えにくさに、伝わりにくさに橋をかける絵本って、本当に素晴らしい。
『ママはかいぞく』
作: カリーヌ・シュリュグ
絵: レミ・サイヤール
訳: やまもと ともこ
出版社: 光文社
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.136(2022年10月号)
プロフィール
三宅 美穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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