Trend&News ■株式会社プレジデントハカタ
3つ目のブランド「ホテルサードプレイス博多」をオープン
プレジデントホテル博多」や「ホテル ラ フォレスタ」を運営する株式会社プレジデントハカタ(友杉隆志社長)はこのほど、新ホテル「ホテルサードプレイス博多」の運営を始めた。同社が運営するホテルとしては3つ目のブランドとなる。コロナ禍で観光産業が冷え込む中、積極的に出店やホテルのリニューアルを行うなど逆張りの経営を推し進め、今年3月決算では過去最高の売上を上げた。
ホテル2棟の運営を受託
―このほど、福岡市博多区に新しく「ホテルサードプレイス博多」をオープンされました。まずは、ホテルの概要から聞かせてください。
友杉
当社は博多駅前で「プレジデントホテル博多」(以下、プレジデント)と博多駅東で「ホテル ラ フォレスタ」(以下、フォレスタ)の2つのホテルを経営してまいりましたので、今回の「ホテルサードプレイス博多」はグループ3つ目のブランドとなります。施設は、「ホテルサードプレイス博多」と「ホテルサードプレイス博多アネックス」の2棟です。
これまで、「ホテルエトスイン博多」と「ホテルエリアワン博多」として営業されていたホテルの運営を当社が受託しました。そして、「ホテルエトスイン博多」を「ホテルサードプレイス博多」(以下、サードプレイス)、「ホテルエリアワン博多」を「ホテルサードプレイス博多アネックス」(以下、サードプレイスアネックス)としてブランドを再構築し、リニューアルオープンしたものです。
まず、別館のアネックスをリニューアルし4月20日にオープンしました。客室はシングル30室、ツイン18室の計48室です。今回は、3階から8階までの全客室をリニューアル、家具類もすべて新調しました。コンパクトな客室ながら、スタイリッシュで機能性にも優れたデザインを心掛けました。残りの1、2階部分は現在クローズしており、第2期工事としてこれからリニューアルに取り掛かります。
―1、2階はは、どのような用途を予定していますか。
友杉
1階部分はレストランとミーティングルームや会議室をつくる予定です。ランドリーコーナーなども設置し憩いの場として利用していただける空間を目指します。2階は客室フロアとして新たに五部屋を設ける予定です。
グループ全体で486室を運営
―別館にはフロントがありませんね。
友杉
サードプレイスは、本館にフロント機能を集中し別館のアネックスは完全に無人での運営としました。宿泊のお客様は、本館でカードキーを受け取り、それを使って部屋に入るというスタイルです。別館は、カードキーがないと建物にも入ることができないシステムになっています。
―本館の改装はどのようなスケジュールで進めるのですか。
友杉
本館のリニューアルは、4月から始めましたが、休館はせず稼働させながらフロアごとの工事を行います。本館は10階建てですので、まずは、10、9、8階から工事を始め、次に7、6、5階と下に向かって工事を進めます。別館も含めすべての改装が終わるのは7月頃になる見込みです。
―サードプレイスが加わったことで、グループで運営する客室もかなり増えました。
友杉
サードプレイスは本館が126室、別館が既存の48室に加えて2階に5室増やしますから、全部で179室。プレジデントが197室、別館のプレジデントホテルアネックスが14室、フォレスタが96室ですから、グループ全体で486室になります。
それぞれのホテルで客層も若干異なりますので、価格帯も分けています。平均客単価は、サードプレイスが7,000円~8,000円、フォレスタが8,000円~9,000円、プレジデントが1万円前後です。こうして、3つの価格帯を設けることでビジネスでの利用から学生団体の合宿や長期滞在など、より多くの目的に合わせた利用ができる体制を整えることができたと思います。
―インバウンド需要にも対応できますね。
友杉
今まで、プレジデントとフォレスタではインバウンドをほとんど受けていませんでした。インバウンド向けの予約サイトなどにも販売を抑えていたため、大半が国内需要で、コロナ前はインバウンドが占める割合は全体の6%程度。今回のサードプレイスの運営をきっかけに間口を広げましたので、今では、インバウンド需要は12~13%を占めるまでに増加しています。
―どのような国からの宿泊客が多いですか。
友杉
主に韓国、台湾、香港、タイからのお客様に利用していただいています。
県外での運営も可能に
―今回は、建物を購入、或いは、建物を一棟借りして運営するこれまでのやり方ではなく、ホテル運営を受託する形式ですから初期投資などの負担はかなり減らせます。オーナー、運営会社双方でリスクを分散できるやり方ですね。
友杉
当社にとっては、初めての契約形式ですが、このようなやり方は今後、広がるとみています。プレジデントは自社所有ですが、プレジデントの別館のアネックスとフォレスタは一棟借りしていますから、毎月家賃が発生します。宿泊客が増えればいいですが、コロナのような要因で客足が激減すると大きなリスクになります。
今回は、売上から経費を差し引いた残りの利益を配分しますから利幅は小さくなりますが、その分リスクも抑えることができます。一方、これまでのホテルと違って、運営方法や投資などについてはオーナーと話し合いながら進めていくことになります。初めての取り組みですから、当社のスタッフも戸惑う部分もあると思いますが、経験を積むことで今後の展開のための課題なども見えてくると思います。実際、スタッフの経験値は確実に上がっています。
―現在、博多駅周辺で展開されていますが、今回のような運営受託であれば、エリアを広げることができますか。
友杉
今回の運営受託形式であれば、条件さえ整えば県外でも運営できます。
組織は勢いが大事
―コロナ感染が拡大し、観光業界は大きな打撃を受けました。宿泊客が激減し先の見通しが立たないなかで、宿泊施設に限らず多くの企業や施設がコスト削減など、守り固めに注力しました。そのような環境下にあって、あえて、プレジデントホテルのリニューアルや飲食店の出店など、世間とは「逆張り」の経営をされていたように感じます。
友杉
新型コロナ感染拡大が始まり、ホテルや飲食店が投資を控えるなか、当社は積極的に投資しました。まず、2021年三月、フォレスタ1階にアメリカンスタイルのバー「ビットブルブラザーズ」をオープンしました。同年5月にはプレジデント隣で別館アネックスの運営を開始。プレジデントはシングル中心ですが、別館では3、4人が泊まれる部屋をご提供できるようになりました。
また、その年からプレジデントホテルのフルリニューアルに着手し、翌年3月にリニューアルオープンしました。プレジデントのフルリニューアルは元々、2022年に実施する予定で計画を立て、それに合わせて積み立てた自己資金と銀行からの借り入れなど、リニューアルに必要な資金調達を進めていました。そうやって計画を進めているところに、新型コロナウイルス感染拡大防止のための行動規制や自粛要請によって宿泊客が激減しました。当館も休館を余儀なくされました。コロナ禍では稼働率20~30%程度にまで落ち込みましたから、お客様に断ることもなく改装できると考え、予定を1年前倒しして2021年に実施しました。ですから、タイミングはよかったと思います。
―新型コロナウイルスが五類に指定され、行動制限がなくなったことで様々な業界で客足が戻りました。一方で、インフレによる仕入れ価格や人手不足により、建築関係もかなりのコスト高になりましたから、コロナ期間中での投資は結果としてよかった。
友杉
材料費、人件費ともに高騰していますし、物によっては、1.5倍~2倍に上がっています。さらに、今から改装すれば、戻ってきた需要を受けることができない。これでは、お客様の期待に応えられず、売上の機会を逃すことになります。経営的には非常にもったいないと思います。
過去最高の売上を計上
―今回のような事態を経験したことがない分、不安も大きかったのではありませんか。
友杉
コロナが2020年3月に始まって、5月にはホテルを休館しました。緊急事態宣言で、私と社員の心は折れそうなほどストレスを感じていました。それでも年内にはおさまるだろうと思っていたので2021年3月にピットブルをオープンしましたが、コロナ収束の兆しは見えない。もう少し早く回復するだとうという私の予測は外れました。コロナの収束が見えないなか、不安を覚えることもありましたが、必ず景気は戻るという確信は持っていました。
休館しても何か動いたり、新しい取組みをしなければ、社員の士気が下がると感じましたので、全社挙げての社員研修などを企画しました。並行して新店舗の出店やホテルのリニューアルを進めました。
―組織には勢いが必要ですから、コロナ禍で投資したというのは、社員がモチベーションを保ち、組織に勢いを持たせるための良い経営判断だと思います。特に、ホテルのフルリニューアルは、大きな投資ですから効果が多かったことでしょうね。
友杉
そうやって動いていると、活気も生まれますし「新しい店を出すぐらいだから、会社は大丈夫だろう」と社員が安心感を持つことができたようです。額を減らして社員には少なからず我慢を強いることになりましたが、ある程度の賞与も出しました。
取引銀行も我々の思いを汲んでくれ、担当の方が本部に熱心に掛け合ってくれたようです。銀行内でも、「先を見越していくのが投資だ」という考えから、当社への融資が実行されたようですし、1つのモデルケースとして評価してくださったと聞いています。
―投資の効果は表れていますか。
友杉
今年に入ってお客様は戻ってきました。おかげさまで、稼働率は90%を超えています。プレジデントはリニューアルしたことで、単価も上がりました。プレジデントは開業から29年目、会社は57期に入りましたが、今年3月は過去最高の売上を記録しました。
―今後の展開について。ホテルと飲食事業を展開していますが、他の事業展開については考えていますか。
友杉
美容、健康をテーマにしたビジネスを模索したいという思いはあります。健康はこの先もなくてはならないもの。そこで、何か形にできればという考えはあります。
レストランの新規出店も可能性があれば、考えたいと思っていますから、常にアンテナは張っています。
会社概要
会社名 株式会社プレジデントハカタ
住所 福岡市博多区博多駅前1-14-7
設立 1968(昭和43)年7月
代表 友杉 隆志
資本金 2,400万円
事業内容 ホテル経営、飲食店経営
URL https://president-hotel.jp/hakata/
Trend&News Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.144(2023年6月号)
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