絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子
文部科学省が、10年ごとに改定する学習指導要領。
2020年、「子どもたちの生きる力を育む」を目標に、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」を重視する指針が出された。つまり、「主体的に生きる力」を育む学校教育を目指すということだ。
この主体的とは「人生を自ら選択してその責任を引き受けること」と『7つの習慣』のコビー博士は言っている。では、自らの選択に責任をもつ生き方のためにはどうしたらよいのだろう。
そこで、急速なデジタル化、あふれる情報化社会の中で責任を引き受けられる選択をするには、感情に流されて選択を見誤ってしまわないように、「何ができるか」自分の強みを知っておいた方がいいのではないか? そう考え、今月の絵本を選んだ。
主人公の少女の家族は、それぞれ自分が夢中になれる世界を持っている。絵画、虫の研究、音楽。自分も好きなことを探そうと、学校のクラブ活動で一通りいろんなことをやってみる。演劇、バレエ、料理、歌。運動、音楽。その中で、これだ!と思ったのが数学。改めて見回してみると、数学はどこにでも潜んでいる。広場の石畳に木の枝に。公園のジャングルジムにベンチに。湖で遊ぶと同心円をみつけ、町並みをみて立方体を知る。こうして少女は数学で世界をみる面白さに気づいていく。
絵本と同じように、経営者の多くはレストランに行っても自分の会社のことが重なる。いつも事業を通して世界を見ている。植物学者牧野富太郎をモデルにしたNHKの朝ドラ主人公の万太郎だってそうだ。絵本の少女も「だれにだってすきなことがあって、それぞれのやりかたで 世界をみてる」という。つまり、自然に世界を見てしまうほど身に付いたこと。これが強みだと気づく。
では自分の強みとは何か。強みとは得意とは違う。絵本の少女のように、誰もが強みに気づいているわけではない。それに、多くの人が強みとは特別なことができることと思っているだろう。
そこで内なる強みに気づくためにも「何ができるようになるか」という問いが必要で、主体性を以て自分らしく生き抜くとは、個の強み社会の一員として貢献できる生き方だと捉えた。
最後、絵本の巻末に少女がまとめたノート活用がある。学びを整理してノートにする。この能力も彼女の強みだろう。
『すうがくで せかいを みるの』
訳 : 福本 友美子
出版社: ほるぷ出版
発行 : 2021年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.143(2023年5月号)
プロフィール
三宅 美穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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