絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
今月の絵本『このよでいちばんはやいのは(2006年発行)』の元となる絵本がある。これより38年前に発行された『もっとはやいものは(一九六八年発行)』。この原作の冒頭に「速い」について次のように書いてある。
「なにかがうごいていると、わたしたちは、あれははやいとか、はやくないとかいう。(本文より)」。
速さは、何かと比較することで体感できるのだ。
今月ご紹介しているのは、より言葉が研ぎ澄まされて、簡潔にわかりやすく翻訳されいている絵本だ。最初のページに「ウサギと イヌと ウマと ダチョウと ネコと カモシカと にんげんが「ヨーイ、ドン」で100メートルきょうそうをしたら だれが いちばん はやいか、わかるかな」という問いがある。
さあ、どれだろう。どれだと思う?
この中で一位はカモシカ。次にウサギ、ウマ、イヌ、ネコ・ダチョウの順に、最後一番遅いのは人間と記されている。次のページには、それより早い動物がでてくる。
こうして、次々に速さが競われ、地上の競争は空の鳥たちへ移っていく。さらには人間が作った動くもの。自動車、新幹線、そしてジェット旅客機。空間へ関心は移り、ジェット旅客機より早い音に関心を移す。この世で一番早いものを探求しているのだから。
音よりもっと早いもの。宇宙へ関心は広がる。地球の自転。人工衛星。地球が太陽のまわりをまわっている速さ。それより早いもの。そう、光だ。稲妻、宇宙から届く月や星の光。光が最も早い。
しかし、絵本はそれよりも早いものがあるという。
それは想像力。人間の頭の中で想像することがこの世で一番早いとある。この生命の不思議な力に触れ、瞬時に立ち上がっては消えていく想像は、世界中どこでも、宇宙の果てまで。さらには、時間さえ超えて過去にも未来にも自在に移動できるのだ。
そこで、よく聞く「仕事が遅い!」を考えてみた。どうしたら速くなる?
その鍵は取り組む前の想像力こそが鍵なのではないだろうか。
行う方も指示する方も、遅いっていうほうも言われる方も、一緒に考えることじゃないだろうか。想像力のための筋肉をトレーニングしよう。
動物の絵を描くならこの人と言われる元旭山動物園の飼育係の経験をもつあべ弘士さん。この画力だからこそより伝わる一冊で共通言語に育ててほしい一冊です。
『このよでいちばんはやいのは』
原作:ロバート・フローマン
翻案:天野 祐吉
絵:あべ 弘士
出版:福音館かがくのとも絵本
発行:2006年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.149(2023年11月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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