絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子
学校から帰ったボクはのんびりする間もなく、お母さんにお使いを頼まれる。地図を渡されるが、ちっともわからない。とうとう迷ってしまった。ここまでを見返しで読む。
最初のページは、ぼくが困っているシーンから始まる。そこへお友達のお母さんが声をかけてくれる。そして地図にちょちょいと目印を書いた。たったこれだけのことで、目的地までスイスイと行け、無事お使いができた。
「地図ってすごい!」
絵本の本筋はここからだ。
ぼくは裏表紙の見返しまでずっと「地図とは?」を探求していく。このぼくの想像の世界が面白い。
先月号の『ぼくのまちをつくろう』は設計図の話だった。みんなが暮らしやすい街づくりを通して、仕事の目的を見える化する設計図について書いた。職場の机の配置、ファイリング、備品の収納など、そこに地図記号を加えて見える化することだった。実は、3月号のエッセイを書いているときは、まだこの絵本は発刊されていなかった。
今月は、その後であった新刊絵本から、先月の設計図の視点も入れつつ、さらに広域で考え、行きたいところまでの道順を示す「地図」について考えてみよう。
地図は、まず自分の立ち位置を示す。複雑な売り場が並ぶデパートで迷子になっても、フロア地図を観れば自分の立ち位置・スタート地点がわかる。
さらに地図は宇宙という巨大な大きさも一枚に収めることができる。しくみや考え方もフレームワークという地図で見えるようになる。専門家にしか読めない地図もあれば、気持ちだって地図になる。未来だって予想地図にできるのだ。
そして、もしも地図をなくしてしまっても手探りであーかな、こーかなと動いていると、新しい発見もある。そんな楽しむ心にまでふれてある。
ぼくの地図あれこれは、事業計画も取引先やお客様の相関図も地図になることに気づく。
うまく目的地にたどり着けない時は、地図を見直してみよう。
目指すところ(理念やビジョン)への行き方は常に一定ではない。あらゆる社会変化に影響を受ける。だからこそ、定期的な更新の必要性にも気づける。
ぼくわからないと思える素直な視点を以て、あらゆることを地図にして示した、まるでビジネス書と思える絵本。
職場に一冊、ぜひどうぞ。
『ぼくはいったい どこにいるんだ』
作 : ヨシタケシンスケ
出版社: ブロンズ新社
発 行:2023年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.142(2023年4月号)
プロフィール
三宅 美穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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