経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

なりたい第1位は「会社員」

当世ビジネス芯話

当世ビジネス芯話  ■編集人 宇野 秀史

第一生命保険がこのほど発表した「第32回 大人になったらなりたいもの」のアンケートに興味を持った。男子の小・中・高生、女子の中・高生の第一位が「会社員」だった。スポーツ選手やITエンジニア、芸能人などを連想していただけに、少しばかり驚きを覚えたからだ。

新型コロナウイルス感染拡大防止策としてリモートワークを取り入れる会社が増え、家で仕事をする親の姿を見る機会が増えたためだろうと解説されていた。回答した子供の多くが「働く親の姿が格好いい」と感じたという。普段、子供が親の真剣に仕事をする姿を見る機会は少ない。しかも、給与が銀行振り込みとなった今の社会では、子供が親に対して尊敬の念を抱く材料が少なくなっているだけに、コロナ禍でのリモートワークは、思わぬ効果を生んだといえるだろう。

先月号から老舗企業の取材を始めた。何代も続いているご当主に、「もともと家業を継ぐ気があったのか」と投げかけると、思いがけず「継ぐものと思っていた」との答えが返ってきた。後継者不在で経営を続けられない中小企業が多いというのに、である。そのご当主は、幼い頃から仕事場で遊んだり、仕事の手伝いをして褒められたり、時には怒られたりしながら大人と一緒に過ごした。そうして、仕事をする大人の格好良さや親の偉大さというものを肌で感じていたから、物心ついた時には、跡を継ぐ心構えができていたのだろう。

ファミリービジネスが長く続く秘訣もこうした環境づくりに要因があるともいえる。また、ご当主たちによると祖父からの影響も大きかったようだ。親は子供に厳しく当たるが、祖父は孫にやさしい。その祖父が3代目になる孫の心を掴んでいたといえるかもしれない。
核家族化が進んだ日本で3世代が一緒に暮らす家が少なくなったが、祖父母の存在は、孫を守り育てる重要な存在ではなかろうか。企業の承継も家に承継も3世代が1つのキーワードになっているように思う。

当世ビジネス芯話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.118(2021年4月号)

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プロフィール

宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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