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空気売りの少女

絵本に学ぶ仕事術

絵本に学ぶ仕事術  ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子

その絵本は、写真の上に少しのイラストが描かれた、決して華やかではないがぐっと引き込まれる大人な佇まいをしている。見開くと、片頁がワイド広がるので視界が広い。
はじめの頁は、都会の河川敷に立ち並ぶ高層マンション群の写真。空は茜色に色づく時刻が読める。しかし、朝だろうか、夕暮れだろうか。この静かな空気を纏った頁の端に、白い線で描かれた、いくつもの風船を手にした空気売りの少女が登場する。
そこへトンボがやってくる。赤い空気がほしいという。少女が赤い風船を手放すとたちまち空が色づく。トンボは赤い空気の中で生き生きとする。

次は、「青い空気をくれないか。海のような」とカモメが言う。青い風船を放つと海のにおいのする青い空気が広がった。カモメは「まるで泳いでいるようだ」と飛び立った。
高層ビルのシルエット写真の中で老夫婦が求めたのは金色の風船。放つと、光輝く空気が広がる。「どうか世界中の人が、しあわせでありますように」という祈りが込められた温かい空気だ。
好きな人に贈りたいと、ピンクの風船が飛ばされる。一面ほんのり淡い恋の色で満たされていく。

最後に残ったのは黒い風船。少女はそっと手放した。街は一気にすやすやと夢の世界へ誘われた。黒はマイナーなイメージだけど、本当は人を包み込む温かい色なのだろう。

先日、クライアントから「今朝、いつもと会社の空気が違っていた。社員みんなも『何かが違う』と言ってきた。あ~ようやく変わってきた!と確信した」という電話をいただいた。この2年ほど職場には重い空気がくすぶっていた。原因は自らにあると思うと話してくれた数日あとのことだった。自分が放つ空気の性質が変わった瞬間、全員の気持ちが晴れ渡ったということだろうか。

目ではみえない空気も、五感では感じることができる。緊迫した空気、温かい空気、殺伐とした空気、すがすがしい空気。よどんだ空気。それらは、天の空気の中に、人の思いが加わっているから。人は知らず知らずのうちに、自分の思いを風船にして飛ばしているということだろうか。 扉の次の頁に「空気が目に見えていたのは、いったいどのくらい前だったかしら」とある。どうやら人は、空気が見えていた時があるようだ。さて、あなたの会社の空気は?

空気売りの少女
 作 :あるほ なつき
出版社:るーつ企画
発 行:2018年

「絵本に学ぶ仕事術®」   Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.131(2022年5月号)

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プロフィール

三宅 美穂子(みやけ みほこ) 
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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