絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子
2022年の壬寅年。今年は、よく学び明るい心に良い言葉を用いて自分に力をつける。さすれば厳しい冬から暖かな芽吹く春の年となる干支だと教えを受けた。まず自分の力をつけること!なら、この絵本だと思い、チェコ、ノルウェー、そしてイギリスにもタイトル違いがある長く語り継がれる昔話を紹介したい。
小さな農場でおやじさんとおかみさんが一生懸命働いて暮らしていた。2人の仕事はたいへんだった。だが、おやじさんは自分の方が、大変な仕事をしていると思っていた。おかみさんは、ならば、2人の仕事を取り換えようと言った。
次の朝、おかみさんは農場へ、おやじさんは家の仕事を始める。最初はソーセージを焼くことから。焼きながらこれに合うリンゴ酒を飲もうと思い立ち地下に酌み行く。樽の栓を抜いて注いでいると、階上で大きな音がする。それは、ソーセージを加えて逃げる犬の仕業だった。
あわてて追いかけるが捕まえられない。「しようがない。すんだことはすんだこと」と言うが、リンゴ酒のことを思い出す。慌てて戻ると地下室はリンゴ酒で溢れている。さらに、バターづくりを始めると他の仕事を思い出し・・・こんな調子で次々とやりかけの仕事が増えていく。あれもこれも、「しようがない、すんだこと」でおしまい。まるでこのおやじさんは私のことかと、絵本に出会ったときに思わず苦笑したものだ。木版画の温かさを感じるモノトーンの挿絵で、おばあちゃんが語るボヘミア地方の昔話の趣を濃くしていて楽しい絵本だ。
どうすればこのおやじさんの仕事ぶりを、いや私自身をマネジメントできるのか?と考えてみた。思い出したのは、フランクリン・コビー『7つの習慣』の「時間管理とは出来事管理。出来事をコントロールできなければ、出来事にコントロールされる」ことや、ドラッカー『経営者の条件』の「成果を上げる8つの習慣から、なされるべきことを考える」や「成果を上げる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない」の基本と原則。
さらにドラッカーは、成果をあげる能力は身につけることができるという。それは、何をしたいかではなく、なされるべきことをなすだけだと。
この絵本のおやじさんは、反面教師だ。大切なことを思い出させてくれた。さあ、時は一月。始めるには最適な月。今年をどう動こう。
『すんだことは すんだこと』
作・絵: ワンダ・ガアグ
訳 : 佐々木 マキ
出版社: 福音館書店
発行日: 1991年05月
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.127(2022年1月号)
プロフィール
三宅 美穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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