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SNSに対する認識のズレが中小企業のネット戦略を誤らせる

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Trend&News   ■セッション アンド カンパニー代表 瀬崎順治 氏

SNSがネット上で大きな力を持つようになった。この傾向は今後、さらに強まるだろう。ビジネスチャンスを求めて、企業や店、個人が様々な情報を発信するようになった。しかし、その大半が上手くいっていない。特に、地方の中小企業は苦戦している。なぜ、SNSを上手く使えないのか。ライブ動画の配信やSNSを活用した販促などを企画、サポートしているセッションアンドカンパニーの瀬崎順治代表に、SNSで失敗する要因や成功するための考え方を聞いた。

SNSの特性を理解できていない

―SNSは個人が情報を発信できる媒体として、いまや大きな影響力を持つに至りました。当然、ビジネスでも不可欠な存在となり、企業や店、個人事業主が盛んに活用しています。しかし、思うような成果を上げているケースは非常に少ないように見えます。それだけ競争が激しくなったということもあるのでしょうが、企業や人がSNSを上手く活用できていない主な原因は何だと考えますか。
瀬崎
SNSとはソーシャル・ネットワーキング・サービスの略で、日本ではツイッターやインスタグラム(以下、インスタ)、フェイスブック、ティックトック、ユーチューブ、ライン、アメブロ、クラブハウスなどが良く知られています。ショートメールもSNSのひとつとして捉えることができます。
SNSを利用する人が増えたことから、これらの媒体を使って集客や売上につなげたいと情報を発信するところが増えました。しかし、一部を除いては、思うように成果を上げることができていないようです。一番の原因は、SNSはどれも似たようなものだから、自分が使いやすいもので発信すれば良いと考え、SNSを切り分けてしまっていることだといえます。例えば、ある企業はフェイスブックだけ、ある店はインスタだけで発信しています。SNSをひとくくりに考えてしまい、それぞれの特性を理解していないために効果的な活用ができていないのでしょう。

―主な媒体の特性について教えてください。
瀬崎
説明をわかりやすくするために、少し偏った表現をします。ツイッターは120文字という制限された中で書き込むものですが、リアルタイム性と情報の拡散という点では一番パワーがあります。ラインも同じような機能がありますが、拡散力ではツイッターの方が優れています。
フェイスブックは、リアルのつながりがそのままネット上に移行して、フェイスブック内でつながり直すようなイメージです。例えば、友達が遠方に引っ越すと普段はなかなか会うことができませんが、フェイスブック上では繋がってる。そうやって、つながりのある人たちにアプローチやアピールができるため、仕事で活用する人は多いと思います。ユーザー層は、中高年が多いようです。

―ラインやインスタは若者を中心にユーザーが増えているようですが。
瀬崎
ラインは、個人がチャットを使ってやり取りするのが主流になっていますね。また、会社が公式アカウントを取得してサイト機能を持たせるなど、利用できる幅も広がっています。インスタは、個人というよりも、設定したテーマを軸に人や情報が集まるショート動画や写真での投稿が軸になっているのが特徴です。共通の趣味に関心を持っている人が集まるということで、ビジネスに活用する人は多いようです。
ユーチューブは検索ハウツー系が強いですね。40代、50代が圧倒的に見ています。経営者が多いのも特徴だといえます。自分の仕事と親和性のあることを勉強しようと思って見るようです。

若者はググらない

―では、若い世代のユーザーは、SNSをどのように利用しているのですか。
瀬崎
何か情報を得ようとする場合、少し前は「ググる」(グーグルの検索エンジンで検索することを俗にググるという。今はグーグルに限らず検索エンジンで調べることも含む)ことが当たりまえでしたが、最近はググることがかなり減り、調べる内容によって様々なプラットフォーム(この場合、ウェブ上で提供されているサービスを指す)を使い分けるようになりました。
例えば、DIYに使う電動ドライバーが欲しい時は、使用方法などを動画で見ることができるユーチューブで探します。近くでパワースポットを探したいと思ったらインスタ。街を歩いて消防車が何台も走っているのを見たら、火事や事故の発生場所や状況を知るためにツイッターでチェックします。
また、同じテーマで探す場合も使い分けています。例えば、神社をテーマにすると、「今すぐ近くのパワースポットを知りたい」「最近すごく良い写真が撮れたパワースポットを知りたい」のであればツイッター。「浄化されたい」とか「刺激を受けたい」、「自然を感じたい」のであればインスタの方が求める情報を得ることができるでしょう。自分の好きな占い師さんが、「あそこの神社が良い」といっている情報を探したいのであれば、その人のフェイスブックから神社の投稿を探します。

今の若い世代は、大半がこのようにプラットフォームを使い分けています。つまり、企業や店といった情報の発信者は、誰が、何をどのように調べているのかを把握し、それに合わせて情報を発信しなければ、せっかく頑張って書き込みをしても、徒労に終わってしまうかもしれないということです。

―SNSを始める前に、自分の会社は誰に対して何を売りたいのか。どのエリアで商売をしたいのかを明確にしておく必要があるということですね。
瀬崎
昔はモノを作れば売れた時代でした。今はモノが溢れていて、欲しいモノは手に入ります。消費者はモノがなくて困ってるわけではなく、自分が欲しいモノを選択するための情報が欲しいわけです。

―それなのに、発信側が的を射ていない。
瀬崎
日本企業の多くが、「新製品はここが良くなりました」とか「性能が何パーセントアップしました」などをしきりにアピールします。テレビのCMを見てもそうなっていますね。大手メーカーなど、マスに訴えかける必要がある企業であれば良いと思いますが、中小企業がこの打ち出し方をしても響きません。「これをやる(買う)ことによって、自分の未来がこうなるだろう」とお客さんが想像できなければ、商品を買いませんし、発信、拡散もしれくれません。その一点突破の発想がSNSでは大事だと考えます。
ところが、社長や店長が40代の主婦に「うちはココです」とアプローチしているつもりなのに、60歳の女性に向けた内容になっている事例をよく見ます。客観的にみればわかることがウェブになると意外とできていない。
発信する情報は、あくまでもユーザー目線で、この人たちが知りたい内容を出すのが絶対条件です。例えば、美容室がユーチューブチャンネルをやっています。そこで、この美容室のシャンプーが競合店のものとどこが違うのかを訴えても、ほぼ見られません。

一方、プロの美容師が「街のドラッグストアで買えるおススメベスト3」を紹介するような動画なら見られます。プロの美容師が自分の店の商品ではなく、ドラッグストアの棚に並んでいる手頃な価格でいい商品を紹介してくれたら、それを使ってみようと思いますよね。常に自社の商品を宣伝するのではなく、自分のお客さんになっている人たちが便利になる情報を出す。そういうチャンネルは伸びやすいし、そこから問い合わせが来る可能性が多くなります。

瀬崎氏はイベント企画やライブ配信なども手掛ける

自社の型を見つける

―プラットフォームはどうやって選択すればいいですか。
瀬崎
例えば、30代くらいでちょっとオシャレなうどん店ならインスタが向いていますし、裸一貫ではじめた頑固な大将がやっているラーメン店であれば、ツイッターの方が良いかもしれません。私の知り合いで、お好み焼き店を数店舗出している会社がありますが、そこは主にツイッターメインで発信しています。

―ツイッターでどんな情報を発信していますか。
瀬崎
「今日はいい牡蠣が入ったので、牡蠣のお好み焼きを限定10食だけ出します」のような情報です。そういう情報をキャッチしたい人が、ツイッターでチェックしていますから反応も早い。一方、「今日はミックス焼きを上げました」「豚玉を上げました」と、インスタに毎日アップしても、同じような見た目であれば、さすがに飽きられます。

―SNSの組み合わせ方はどのように考えればいいですか。
瀬崎
1つの例ですが、料理教室ならインスタやユーチューブで投稿もしくは配信し、体験の予約でラインへ誘導していく。ラインでは、その後も登録者のみに届く有力な情報を配信してコアなファン層をつくっていく。この場合、インスタやユーチューブはラインへの導線でで、ラインは決断やコアファンの育成のためのものとして導線を引くというものも考えられますね。
ツイッターは拡散力が強いですが、認知からクロージングまでを単独でやるのは難しい。インスタだけでもそうです。ですから、「認知させるもの」と「検討させるもの」、「決断させるもの」は、情報とプラットフォームを分けるべきだと考えます。

成功するポイントは自社なりのSNSの型を見つけることです。他社の成功例は参考にはなりますが、必ずしもその成功例が自社に当てはまるわけではありません。自分のSNSの型というか法則を見つけないとうまくはいかないと思います。逆にその型を見つけることができれば、伸びます。その型を探すのが、とても重要です。その型の中で、インスタなのかツイッターなのか、ティックトックなのかということを見極めて組み立ててください。

瀬崎順治氏プロフィール

SESSION&CO(セッションアンドカンパニー)代表

1979年5月生まれ。福岡市出身。2001年に上京、「NANANINE」でメジャーデビュー。
アメリカの大型フェス「SXSW」やニューヨーク含むアメリカツアー、国内最大音楽フェス「SUMMER SONIC」などに出演。CD13枚、DVD2枚をリリース。
2006年活動休止後、アーティストのライブやレコーディングのサポート、プロデュースなどを行いながらコンサート制作や音楽フェス、企業イベントなどの事業を開始。
3Dマッピングや噴水を使用したウォーターマッピングのプロデュース、イベントやコンサート訴求のためYouTubeマーケティングを手掛ける。
データ分析、SEO対策を徹底したYouTubeチャンネル運用により、イベントやコンサートの認知、集客、収益化をサポートしている。

Trend&News  Navi(ビス・ナビ)Vol.131(2022年5月号)

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