経営者と税理士と節税 ■井上税理士事務所 所長 井上 伸一
8月末が、令和5年前期の医療法人設立申請書の提出期限です。今回は、今まで経験したことがない状態・条件での設立申請のお手伝いをしています。色々なパターンが有るものだと、楽しみながら申請手続きをしていますので、許可申請書を受け取った際には、嬉しさ倍増になると思います。
これまでは、医療法人のメリットについてお話してきましたが、今回はデメリットについて見ていきます。
一般的にデメリットといわれる事をお話していきますが、先生方によっては、デメリットというよりメリットと感じられる事もあるかもしれません。
デメリットは、「経済的デメリット」と「心理的(なんとなく嫌だ)デメリット」に分けられると思います。
経済的デメリットとしては、
①小規模共済が対象外
②スタッフの社会保険への強制加入
③法人と個人の財産の分離
④法人化後は原則として個人事業への後戻りができない
といったような事項が挙げられます。
最も影響があるのは、「①小規模共済」かもしれません。法人成りの際は、取り扱いに注意が必要です。社会保険の取り扱いについては、事業所の魅力として、求人の際にメリットになるかもしれません。また、「③法人と個人の財産の分離」については、メリットと思われる先生もいるでしょう。
個人診療所では、レジの中のお金を持ってパチンコに行っても大した問題になりませんが、法人診療所で同じことをすると先生への貸付金として処理しなければなりません。この辺りは、「心理的デメリット」にもなるかもしれませんね。
心理的デメリットも色々とあるかもしれませんが、主に2つが挙げられると思います。
①利益が上がっても直ぐには役員報酬に反映しない
②保健所への事業報告書の提出
です。
これら2つの心理的デメリットに関しては、次回にもう少し詳しくお話ししたいと思います。
経営者と税理士と節税 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.146(2023年8月号)
プロフィール
井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。
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