経営者と税理士と節税 ■井上税理士事務所 所長 井上 伸一
会社を経営している社長さんは、会社から給与をもらいます。いわゆる役員報酬です。皆さんは、意識されたことは無いかもしれませんが、基本的に役員報酬は損金不算入なのです。一定の要件を満たしたものが、損金算入となります。なので、この一定の要件を満たすように報酬を支払うことになります。
一定の要件とは、いくつかありますが、馴染みがあるのは、
①定期同額給与
②事前確定届出給与
だと思います。
定期同額給与とは、一定の条件がありますが、法人が役員に対して支給する給与で、その支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同じものをいいます。
事前確定届出給与とは、所定の時期に確定額を支給する給与で、事前に「事前確定届出給与」を税務署に届け出ている給与です。どのような場合に、この届出書を提出するかは様々ですが、従業員と同じ時に賞与を貰いたいとか、資金繰りの都合で毎月の支払が難しいなどの理由が一般的でしょう。
事前に届け出た内容と異なる金額で支給した場合には、支払った給与は事前確定届出給与に該当しないことになります。その場合は、費用処理した金額の全額が、法人税を計算する際に損金不算入となります。例えば、100万円を支給するという内容で届出をしていたにもかかわらず、120万円を支給した場合には、120万円と100万円の差額である20万円を損金不算入とするのではなく、120万円を損金不算入とします。同様に、100万円を支給するという内容で届出をしていたにもかかわらず、70万円を支給した場合には、100万円と70万円の差額である30万円を損金不算入とするのではなく、70万円を損金不算入とします。届出どおりの金額でなければ、多く支給しても、少なく支給しても、支給額の全額を損金不算入とするのです。
では、届出をしていたにもかかわらず、全く支給しなかった場合は、どうなるでしょうか。例えば、100万円を支給するという内容で届出をしていたにもかかわらず、1円も支払いをしなかった場合です。次回は、この場合についてお話しします。
経営者と税理士と節税 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.137(2022年11月号)
プロフィール
井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。
コメント