経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

役員報酬と事前確定届出給与②

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一


前回から、役員報酬の事前確定届出給与についてお話をしています。
事前確定届出給与とは、所定の時期に確定額を支給する給与で、事前に「事前確定届出給与」を税務署に届け出ている給与です。どのような場合に、この届出書を提出するかは様々ですが、従業員と同じ時に賞与を貰いたいとか、資金繰りの都合で毎月の支払が難しいなどの理由が一般的でしょう。

では、届出をしていたにもかかわらず、全く支給しなかった場合は、どうなるでしょうか。例えば、100万円の賞与を支給するという内容で届出をしていたにもかかわらず、1円も支払をしなかった場合です。
全く支給が無かったのだから、税務申告の際の加算や会計上の仕訳も何も発生しないと思われるかもしれませんが、そうではありません。税務上は、役員賞与の発生を認識し、それを支払わずに済んだという債務免除益が発生します。当該役員は、100万円の賞与を受け取らなかったにもかかわらず、100万円の賞与に係る源泉所得税の支払義務が発生します。法人は、100万円の債務免除益を認識し、課税所得が増えるということになります。

それでは、このようなダブルパンチが起こらないようにするためには、どうしたら良いでしょうか。一般に債務はその支給日に確定するとされています。そのため、支給日が到来する前に取締役会等で、全額不支給の決議を行い、役員が賞与の受取を辞退することにより、このような災難を免れることができます。
私のクライアントで、申請の際に支給するかしないか不明な場合は、不支給の議事録も一緒にお渡ししています。予定通りに支給した場合には破棄すれば良いので。これが、正しい行為かどうかは微妙ですけれども。
時々、私のクライアントではない経営者とお話をすると、このような取引・処理になることをご存じない方ばかりです。これまで、税務調査の際に指摘をされたことはありませんが、たまたまラッキーなだけなのか、調査官が知らないのか、気にもしてないのかは分かりません。

変更届を提出することにより、事前確定届出給与の届出内容の変更も可能です。財務状況等を顧問の税理士さんと相談のうえ、色んな方法をご検討ください。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.138(2022年12月号)

<プロフィール>

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】

井上税理士事務所 所長

昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.138(2022年12月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

コメント

タイトルとURLをコピーしました