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相続税における生命保険金に係る非課税枠

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

被相続人の死亡を原因として、相続人のもとに入ってきた死亡保険金等は税法上、みなし相続財産となります。死亡保険金などは、民法上は亡くなった人の財産(遺産)ではなく、死亡によって契約上受取人に指定された者が受取る固有の財産です。しかし、相続税法上は、相続財産とみなして相続税を課すことにしています。そこでこれを「みなし相続財産」と呼んでいます。
現金や株式で資産を保有しておくより、生命保険等で持っているほうが、相続税対策として有効であるということをご存じの方は多いと思います。この有効性は「生命保険に係る非課税枠」の存在があるからです。

死亡保険の「生命保険に係る非課税枠」についての適用方法について、勘違いされている方が多くいらっしゃるように思えます。死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、「全ての相続人が受け取った保険金の合計額」が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

500万円×法定相続人の数=非課税限度額

例えば、法定相続人が妻と子供が2人の合計3人である場合には1,500万円(500万円×3)の非課税枠が有るということになります。法定相続人が1人増えれば、この非課税枠が500万円ずつ増えていくことになります。非課税枠の分だけ課税資産が少なくなるので、生命保険を利用した方が、現金で持っているよりも相続税は少なくなり、節税となるのです。

先にありましたように「全ての相続人が受け取った保険金の合計額」つまり、被相続人に関する全ての生命保険金の合計に対しての非課税枠となります。1つ1つの生命保険契約に対してそれぞれに非課税枠があるのではありません。

保険会社や銀行の営業さんは「生命保険の非課税枠を利用して相続税の節税をしませんか」と言ってセールスをします。このトークは間違ってはいませんが、すでに、一定金額以上の生命保険契約があれば、この非課税枠の利用は終わっており、新たに生命保険に加入しても節税にはなりません。しかし、既契約の存在を確認せずに、この節税トークを利用して契約を取ろうという営業さんをたまに見かけますので、注意をしてください。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.123(2021年9月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】 
井上税理士事務所 所長

昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

http://www.itax.jp/

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