経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

離婚に伴う財産分与②

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

離婚に伴う財産分与に関するお話の続きです。税理士が受ける離婚に関する相談で最も多いのが、財産分与に関することではないでしょうか。
基本的に、財産分与を受ける方は、所得税や贈与税が課税されることはありません。「基本的に」という理由は、①社会通念上、もらい過ぎという場合や②不当に税を免れるための離婚である、と判断された場合は、贈与税が課税されるということです。

財産分与をした方には、通常、譲渡所得税がかかります。しかし、譲渡益が存在していても、財産分与をする側の譲渡所得税を抑える方法もあります。その方法は、不動産の所有権の移転を①「離婚前」にするのか②「離婚後」にするのかによって変わってきます。
譲渡所得税と贈与税には、下記の制度があります。
①離婚前
贈与の日において婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用不動産の贈与を受けた場合、贈与税の課税価格から最高2,000万円までの控除を利用。

②離婚後
譲渡する相手が親族でない場合に、居住用不動産を譲渡する際には、譲渡益から3,000万円の控除を利用。

これら2つの制度は、居住用不動産にのみ適用される制度です。不動産の所有者が実際に居住していることが条件となります。また、その不動産に居住しなくなって3年以上が経過すると、この制度が利用できなくなる場合があるので、注意が必要です。

離婚に伴う財産分与で、後々、税務に関する問題となるのは、前回も記載しましたが、税務署へ「離婚での財産分与」と説明できない場合です。贈与税が課税される可能性があります。よくある例ですと、「離婚から数年後、住宅ローンが完済した後に所有権の移転登記をおこなう」というような場合です。
住宅ローンの抵当権が残ったままの不動産を貰うのは嫌なので、ローン完済までは、名義をそのままにして、完済後に財産分与・名義変更をするということがあります。この場合、税務署に「○年前における離婚での財産分与が登記原因である」と、客観的証拠をもとに説明する必要があります。客観的証拠としては、離婚協議書のようなものがあります。

理想は、夫婦円満ですね。我慢強い妻に感謝です。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.135(2022年9月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

コメント

タイトルとURLをコピーしました