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非日常を作り、楽しむ

弁理士よもやま話

弁理士よもやま話  ■加藤合同国際特許事務所 会長  加藤 久

日常に流されて生きていると、考え方も自然と硬直化してしまう。ところが、あえて日常を壊し、非日常を作り、そこに身を置くと、今まで思いもつかなかった考えが自然と浮かんでくるようになる。
日常を壊すといっても、我々は様々な社会的条件の中で生きているので、そう簡単には日常を壊すことなどできない。特に仕事をしている身としてはそうであろう。私も、特許事務所の所長をしていたときは、すべてが仕事中心、仕事優先で回り、自由に自分の生き方を貫くことなどできなかったが、所長から会長となり、各段に自分の思う通りの時間の使い方ができるようになった。

そこで、ひと月に1週間は旅行に出かけ、非日常を作ることとした。旅行といっても、完全に仕事を忘れるわけではなく、同じように仕事のことを考えているのであるが、それでも日常と異なる環境で考えてみると、思いもかけない良いアイデアが浮かぶものである。
9月は1日から1週間ほど、京都は東山にある操業130年のホテルに滞在し、神社仏閣を巡りながら、懸案事項を考えた。時間をかけてじっくり取り組むことができるので、所長時代より良質の仕事ができているような気がする。

現在、4つほどの重たい仕事を抱えているが、不思議と焦りはない。解決策が簡単に浮かばないものばかりであるものの、それでも、その状況を頭の中にインプットすると、脳細胞のどこかで勝手に考えてくれ、まるで漬物が熟成するように、時間がたつと解決策のヒントが得られるようになった。眉にしわを寄せて考えていないので、疲れることもないし、朝起きたら解決のヒントが得られているという感じである。
よくよく考えると、自分を見つめる時間を作るというのは、引退し暇になってやるのではなく、現役の多忙の中でこそ、何とかやりくりしてやらねばならないことのように思う。その効果は絶大なものがあるので、多忙な方こそ、ぜひ挑戦していただきたい。

さて、京都の一週間であるが、東山にある創業130年のホテルを拠点として、移動中も静かな佇まいの街並みを楽しみながら、加藤家の菩提寺である地光地の、浄土宗総本山知恩院、観光地清水寺、平安神宮等々多くの神社仏閣を歩いてお参りすることができた。

コロナがまだ一段落していないとは言え、清水寺は多くの観光客でにぎわっていた。今や、「今年の漢字」や、「絶景」の観光地として京都一有名になった観がある清水寺であるが、清水寺の宗旨を、すぐに言える人がどれだけおられるであろうか。

清水寺の宗旨は、当初は法相宗で、平安時代中期からは真言宗を兼宗していた。明治時代初期に一時真言宗醍醐派に属するが、明治18年に法相宗に復し、昭和40年に住職であった大西良慶が、北法相宗を立宗して法相宗から独立した歴史を持つとのことである。
宗旨というのは「宗門の教えの中心になっている、心のよりどころで」あり、そう簡単に変えられるものではないと思っていたが、清水寺の今の賑わいを見て、まさに「自らで非日常を作り、時代に即して変貌した」結果なのであろうと思った。

一週間の旅の最大の収穫は、結局、当たり前だと思っていた、日常のありがたさに気づかされたことでもあった。家に帰った時の、あの何とも言えない安心感は、一体なんなのであろうか。

弁理士よもやま話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.136(2022年10月号)

プロフィール

加藤 久(かとう ひさし) 
加藤合同国際特許事務所 会長 
1954年福岡県生まれ。佐賀大学理工学部卒業後、福岡市役所に勤務。87年弁理士試験合格、
94年加藤特許事務所(現:加藤合同国際特許事務所)設立。2014年「知財功労賞 特許庁長官表彰」受賞、20年会長就任。
得意な技術分野:電気、機械、情報通信、ソフトウェア、農業資材、土木建設、無機材料、日用品など。

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