絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
おやつの時間に始めるゲーム。いくつかの種類の違ったショートケーキの中から子どもに自分の好きなケーキを選ばせる。親も選ぶ。そして「これすっごくおいしい!」と良い選択をしたことを喜んでみせる。一見意地悪のようだが、実は選択力を養うゲームだ。
「え~ちょっと味見させて~」と私なら言ってしまいそうだが、それは無し。もちろん「こっちがいいなら取り換えてあげようか?」もしてはいけない。
日常の生活は選択の連続。いちいち、子どもの選択に口を出していたら、いつまでたっても自立しない。誰かに依存し始める。自分の選択に責任を持つ体験を奪ってしまう。
あらゆる「選ぶ」を繰り返していくと、やがて選ぶ決め手はなにか、じっくり考えるようになる。自分の気持ちとちゃんと向き合うようになる。ひいては自己肯定感を身に着けることができる。
この選択を探求するのに最適な、ベストセラー絵本。1983年が初版となる『ねぇ、どれが いい?』を紹介したい。
もしも、「動物たちと遊ぶとしたらどの遊び?」「どれかを食べなきゃいけないとしたら?」「お金をたくさんもらえるとしたら我慢できるのは?」と、究極の選択は続く。
中には「とうさんが、がっこうで おどるのと、かあさんが きっさてんで どなるのと、どっちがいい?」とナンセンスな問いもある。本当にありそうで怖い気もするけれど、それを示唆ように、絵本のカバーのそでに、次のように書かれている。
―「ねぇ、どれがいい?」と聞きながら、次々出されてくるのは、とんでもない選択ばかり。子どもたちは「どれもいや」といいながら、大喜びであれやこれやなやみますー
選択の練習には「こんどこそ!」と落ち込むことだってある。一生の内最高の選択なんてどれくらいだろう。いちいち落ち込んではいられない。ユーモアがなければ次の選択の勇気は持てなくなる。だから笑いに変える力こそが重要なのかもしれないと気づく。だって、子どもたちは大喜びなのだ。
さらに、最後のページで「そんなことより、もしかして ほんとうは、もうじぶんのベッドでねむりたい?」と締めくくられる。最終的には、「自分はどうしたいか」であり、「その決定をした自分に自信を持つ」ことなのだ。
「自分の中にある大切にしている指針は何か?選択の基準はなにか?」自分をしっかり持つことなのだ。
『ねえ、どれがいい?』
作:ジョン・バーニンガム
訳:松川 真弓
出版社:評論社
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.153(2024年3月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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