経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

相続財産とみなし相続財産②

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

相続財産に似て非なるものに、みなし相続財産というものがあります。みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではありませんが、相続税を計算する際には相続財産とみなして相続税の計算を行います。代表的なものとしては、生命保険金と死亡退職金です。これらの財産は、被相続人が所有していた財産ではありませんが、被相続人が亡くなったことを理由に相続人の財産になります。なので、民法上の相続財産ではありませんが、相続税が課税されることになるのです。

みなし相続財産は、生命保険金と死亡退職金以外にもあります。①定期金に関する権利②生命保険契約に関する権利です。
①定期金とは個人年金保険等、定期的に支払われるものです。亡くなった方が、生命保険会社に個人年金の保険料を支払っており、年金の受取人が亡くなった方以外の場合に、当該受取年金もみなし相続財産になります。保険料を支払った方が亡くなった時に年金の支給が開始されてなくても相続税が課税されます。
②生命保険は、契約者と保険料を支払う人が異なる場合があります。例えば、子が契約者であっても親が保険料を支払っているような場合です。この場合、保険料を支払っている親が死亡すると、当該生命保険契約の権利は相続財産とみなされ、相続税が課税されることになります。

この際の評価額は、解約返戻金の額となります。これを利用して相続税の節税が可能となる場合があります。いくつかの生命保険会社は、契約時から10年間程度は解約返戻金が低く抑えられている一時払い・短期払いの終身保険があります。例えば、年間保険料が500万円で加入から9年経過時の解約返礼率が70%で、10年目以降の返戻率が90%を超えるような契約に加入し、9年目に保険料を支払ってくれた親が死亡したとしましょう。9年間で4,500万円の保険料を支払っていますが、相続税の評価額は4,500万円×70%で約3,150万円となります。こんなに上手く計画通りには行くかどうかはわかりませんが、長生きしてくれれば、それはそれで有難いと思えるのかと。
皆さんはいかがお考えになりますか。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.142(2023年4月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

コメント

タイトルとURLをコピーしました