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離婚に伴う財産分与①

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

数か月前のこの記事にて、「私自身が年齢を重ねるに連れ、相続に関する相談や申告が増えてきました」と記載いたしました。相続に関する相談と同じように増えている相談が、離婚に関する事案です。離婚率が約35%といわれる日本ですが、年々、相談が増えているように感じます。相談の中には、「そんな話は弁護士だよ」といような案件もありますし、相談なのか、愚痴なのか分からないようなお話もあります。税理士が受ける相談で最も多いのが、財産分与に関することではないでしょうか。

基本的に、財産分与を受ける方は、所得税や贈与税が課税されることはありません。「基本的に」という理由は、①社会通念上、もらい過ぎという場合や②不当に税を免れるための離婚である、と判断された場合は、贈与税が課税されるということです。
財産を与える方、財産を受け取る方の両方からご相談を受けます。一般的に、男性が女性に財産分与を行うことが多いですが、女性が男性に財産分与を行った例も過去には経験しています。

財産を分与する方の課税関係は、どうのようになるのでしょうか。簡単にいうと、時価で売却するという処理になります。不動産であれば、「財産分与のときの不動産の時価」が「不動産取得時の時価(建物については減価償却後の価額)」よりも大きければ、その差額(譲渡益)に対し財産分与をした方に譲渡所得税がかかります。しかし、譲渡益が存在していても、財産分与をする側の譲渡所得税を抑える方法もあります。これに関しては、次回、お話しします。

離婚に伴う財産分与として不動産を分配する場合でも、税務署へ「離婚での財産分与」と説明できない場合、贈与税が課税される可能性があります。よくある例ですと、「離婚から数年後、住宅ローンが完済した後に所有権の移転登記をおこなう」というような場合です。

住宅ローンの抵当権が残ったままの不動産を貰うのは嫌なので、ローン完済までは、名義をそのままにして、完済後に財産分与・名義変更をするということがあります。この場合、税務署に「○年前における離婚での財産分与が登記原因である」と、客観的証拠をもとに説明する必要があります。客観的証拠としては、離婚協議書のようなものがよいでしょう。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.133(2022年7月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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