■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 美穂子
小学校の生活科に「町探検」という授業がある。「探検する」や「町の機能に関心をもつ」、そして「地域交流」などのテーマがあるようだ。
この地域交流。ここでは、単に挨拶をしてコミュニケーションを取ることだけを言うのではなく、いかに自分たちは、様々な仕事や環境に支えられているかに気づく重要なテーマを持っている。自分たちは社会の一員だと意識を強くする機会なのだ。大人たちも、子どもたちの訪問で、その地域を担う役割、つまり自分たちの仕事の存在価値に気づくことができる。
私は転勤で各地を巡った。土地勘はいい方だったが、それでも地域によって違う町のつくり方は、便利さ、暮らしやすさを大きく変えた。
実は職場も社会と同じなのだ。町の地図同様に、仕事の設計が必要だ。設計次第で、ミスも漏れも無駄も防げる。必要のないものを取り除ける。設計は、建築や仕事だけじゃない。物語の展開も、お料理の食材の組み合わせも、家事の段取りも設計。
一級建築士の書いた『仕事の設計図を描く』という本の中で、建築家発想と公務員発想では、建物の入り口や間取りが変わり、町全体に及ぼす暮らしやすさも人の行き来する動線も格段に変わるという。
仕事も、人それぞれの設計で進むと、安定した品質の提供にはならない。そこで、この仕事は、どのようなプロセスで動いているか、誰もが共通認識できるか、職場も人にとって動きやすいものだろうか、設計図が必要なのだ。そこには間取り配置の問題だけでなく、情報を誰もが取り出せるように整理整頓することも含まれる。
さらに、仕事を平面図でみる。立体図にして多層的に描いてみる。これらを一目でわかるように地図に起こしていくのだ。
地図には共通言語となるアイコン、地図記号がある。これによって迷わなくなる。
こうして見える化することで、仕事の優先順位、時間や労力の配分。問題解決するのはどこなのかが見えてくる。一つ一つのパーツのような仕事が全体のどこに位置するのかも見えてくるだろう。理想的な仕事の構図、職場の環境は設計に始まることに気づける絵本。『ぼくのまちをつくろう!』。
この絵本は、改めて仕事の地図について考える一冊になるはずだ。(絵本の絵をコピーして、裏表紙に街を描ける作りになっています)
『ぼくのまちをつくろう!』
作: スギヤマ カナヨ
出版社: 理論社
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.141(2023年3月号)
プロフィール
三宅 美穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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