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背水の陣  言うは易しだが

ビジネス徒然草

ビジネス徒然草  ■アネーラ税理士法人 統括 藤本 周二

背水の陣という言葉はよく聞きます。意味は次の通りです。
「失敗したら再起不能という一歩も後にひけない状態に身を置いて、決死の覚悟で事に当たること。」さしずめ現在の経営者としたら目標を立て、達成できなければ辞任する。あるいは会社をたたむなどの覚悟を持って事に当たるという意味かと思います。

そもそもこの故事は中国の韓信の作戦から出てきたものです。韓信は中国史上最大の戦争家と言われています。後ろに川がある隊列を組み下がれば川に落ち死ぬという陣を敷き、必死の戦いをすることにより大勝したというものです。戦争ですから負ければ死を意味しますのでその覚悟は現在の比ではないのでしょう。

そのように考えると現在の経営において「背水の陣」とはどのような場合を指すのでしょうか。
いろいろなケースが考えられると思います。もちろん業績が厳しい会社は失敗すれば会社としての死(倒産)が待っているとしたら背水の陣を敷かざるを得ないのかもしれません。ただ、韓信の背水の陣は少し意味が違うと私は考えています。背水の陣を敷く前から韓信は勝ち続けていました。そのうえで必ず勝てる作戦を立てたのです。つまり倒産寸前の会社が背水の陣を敷いたのではなく勝ち続けている会社が背水の陣を敷いたものと考えるとわかりやすいものと思います。

すなわち、会社の経営はまあまあ順調に行っている。しかし、もっと伸びたいが会社としては安定期に入っている空気もある。そのような時期にさらに伸びるために背水の陣を敷く。背水の陣とはそのような意味ではないかと思います。倒産寸前の会社は当然背水の陣であり、韓信の背水の陣とは意味が少し違うのではないかと思えます。

そう考えると会社も順調に成長して経営者としても多少慢心も出てきたが上を見ればまだまだ上がある。この時に新事業にチャレンジする。会社の命運を左右する大きな投資をする。このような事が経営的に背水の陣ではないかと思えます。

ユニクロの柳井さんの「1勝9敗」という本を読むと常に新たなチャレンジをされており自ら背水の陣を敷き過ごしてある印象を受けます。
背水の陣を敷くことはこう考えるととても大変なことです。ある意味安定的に過ごしたいと考えるのも道理だと考えるからです。
しかし、常に背水の陣を敷き頑張っている経営者はとても大きな魅力があると思うのは私だけでしょうか。

ビジネス徒然草  Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.140(2023年2月号)

プロフィール

藤本 周二(ふじもと・しゅうじ) 【公認会計士】
アネーラ税理士法人 統括・東京事務所代表
1959年12月生まれ、福岡市出身、中央大学法学部卒。98年12月藤本公認会計士事務所を設立、所長に就任。2009年8月にエスペランサ税理士法人を設立し、理事長に就任。12年1月エスペランサコンサルティング株式会社、15年3月九州M&Aサポート株式会社、20年12月九州有限責任監査法人を設立。19年エスペランサ税理士法人をアネーラ税理士法人に改称。
信条:至誠天に通ず
著書:『社長の品格』(海鳥社刊)

https://anera.or.jp/

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