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相続税の申告と配偶者

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

先日、知り合いから相続税のご相談がありました。ご主人が亡くなったので相続税の相談にのって欲しいとのことでした。ご主人の逝去は突然のものであり、いつものように朝、会社への出勤を見送ったのですが、その数時間後に会社から病院へ緊急搬送された旨の連絡を受けました。残念ながら、ご主人は、そのまま帰らぬ人になってしまいました。

このご夫婦には、子供がおらず、相続人は、奥さんとご主人の妹さんのお二人となります。この場合、法定相続分は、配偶者は3/4となり、妹さんは1/4となります。また、相続税の申告には配偶者控除があり、1億6,000万円までの相続財産には相続税は課されません。1億6,000万円を超えても、法定相続分までであれば相続税は課税されないことになります。例えば今回の場合であれば、ご主人の全財産が100億円であっても、配偶者の取得財産が75億円以下であれば、相続税は課税されないことになります。もちろん、今回はそんな大きな案件ではありません。しかし、亡くなったご主人は、大手企業にお勤めでしたので、退職金や遺族への弔慰金等は、かなりの金額でした。
この事案では、相続財産は1億6,000万円以下なので、奥さんには、配偶者控除が適用になり、通常は相続税が課税されません。しかし、配偶者控除の適用を受けるには条件があります。①戸籍上の配偶者であること ②相続税の申告期限までに遺産分割が完了していること ③相続税の申告を申告期限までに行っていること となります。

相続税の配偶者控除を受けるためには、戸籍上配偶者として登録されている必要があります。婚姻期間に定めはありません。内縁の妻などは戸籍上の配偶者に該当しないので配偶者控除の適用はありません。
相続税の配偶者控除を受けるためには、相続税の申告が必要となります、相続税の配偶者控除を受けると相続税が0円になる場合でも、相続税の申告が必要となるので、注意が必要です。

申告期限が過ぎた場合でも、配偶者控除は適用となります。また、相続税の申告後に新たな財産が見つかった場合には、修正申告が必要となりますが、この場合にも配偶者控除の適用があります。税務調査後は、適用されない場合もありますので、注意がひつようです。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.137(2022年10月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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