経営者と税理士と節税 ■井上税理士事務所 所長 井上 伸一
最近、相続税の申告やご相談が続いています。配偶者の非課税枠等を利用するので、納税額がない場合もありますが、相続税の申告をすることにより、配偶者の措置等、色々な制度の恩恵を受けることが出来るので、注意が必要です。前回、生命保険の保険金は、保険契約者(保険料の負担者)が誰か、被保険者(保険の対象となっている人)が誰か、保険金の受取人が誰かによって、受け取った生命保険金の課税が異なるというお話をしました。
今回はもう少し具体的にお話をいたします。夫、妻、長男、長女の4人家族で、夫(60歳)を被保険者とする保険契約(A保険会社 終身保険 死亡保険金5,000万円 年払保険料330万円 払込期間15年 総保険料支払額4,950万円 受取人長男)をし、払込期間終了後に夫が死亡したとします。
まず、契約者(保険料の支払者)が夫である場合の課税関係等はどのようになるでしょうか。夫が死亡し相続が発生すると、この保険契約の保険金5,000万円は「みなし相続財産」として相続財産となり、相続税が課税されます。以前にお話ししたように生命保険金には、「500万円×法定相続人の数」を限度として非課税枠があります。今回の場合、法定相続人は3人となりますので、1,500万円が非課税となり、3,500万円の課税金額となります。
もし、生命保険に加入せず、相続発生時まで保険料相当額を現預金で保有していた場合には4,950万円(総保険料支払額)に相続税が課税されるので、生命保険の非課税枠の分だけ相続税額が安くなることになります。保険契約ごとに非課税枠が有るのではなく、全ての保険契約の合計に対しての非課税枠となります。(多くの保険契約がある場合には注意が必要です)
この生命保険以外にも多くの資産がある場合には、相続税の税率が上がることにより、生命保険を利用するメリットも大きくなります。
次回はもう少し、お得な方法をご紹介します。保険料相当額を夫が長男に贈与し契約者が長男の場合はどのような課税関係になるでしょうか。
経営者と税理士と節税 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.126(2021年12月号)
プロフィール
井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。
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