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決算対策での養老保険と定期保険

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

2019年の2月に保険業界で「バレンタインショック」といわれる国税庁の生命保険各社が販売している中小企業経営者向けの保険について、課税ルールの見直しがありました。このルールでは、ピーク時の解約返戻率によって、損金算入割合を決めるというもので、現在もこのルールが適用になっています。
適用される保険商品は、定期保険、逓増定期保険、長期平準定期、がん保険となります。損金への参入割合は次の通りです。

最高返戻率 損金算入割合 
85%超10%
70%超  85%以下40%
50%超  70%以下60%
50%以下100%

3月に入り、3月決算法人の決算対策を行う時期となりました。このバレンタインショックまで、一般的に企業の決算対策に利用されるのは、このような定期保険が中心でした。しかし、返戻率が高くなると、損金算入割合が低くなり、多額の保険料を支払ったにもかかわらず、法人税の支払額への影響は少なくなってしまいます。現在、「生命保険での決算対策は終わった」と多くの方が言っておられ、また、各生命保険会社、代理店もこれまでのような大きな保険料の支払いが必要な契約を諦めている節も見受けられます。

しかし、この新ルールは、養老保険には適用されません。養老保険は、通達で損金算入割合が決められており、一定の要件を満たせば、50%損金算入が可能となり、また、契約年齢や契約期間、契約方法次第で、単純返戻率が100%を超えることもあります。

養老保険とは、被保険者が、保険期間内に死亡したときにも、満期まで生存したときにも、同じ額の保険金が支払われる生命保険で、生存保険と死亡保険とを組み合わせたものであるところから混合保険ともいわれます。
この養老保険の利用次第では、これまでと同様または、それ以上の効果的な決算対策、企業防衛、資金繰りに利用可能となります。
法人契約の生命保険の基本は、この養老保険です。かんぽ生命の保険商品もこの養老保険です。
もう一度、この養老保険を見直して、皆さまの企業防衛にお役立てください。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.153(2024年3月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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