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『おんぶはこりごり』

絵本に学ぶ仕事術

絵本に学ぶ仕事術  ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子

感謝する言葉「ありがとう」は「有る」ことが難しいと漢字で書く。家族に職場に社会に、自分の周り全てに「有る」ことを見つける力がなければ「ありがとう」という言葉にはつながらない。「ありがとう」の前に「有る」に気づかず、「あたりまえ」になってしまった感性では、感謝することは、難しいこと。だから有難うなのだ。

この「あたりまえで生きていたらどうなる?」を、シュールに表現した絵本をご紹介したい。
絵本に登場するピゴットさん一家は、持ち物、家の装飾品からも不自由のない暮らしをしていることが読める。特にこの3人は精神的にもママの存在によって充足されている。
「ママ、朝ご飯」と言うだけで会社にも学校にも行けるし、「ママ、夕ご飯まだ」というだけでゴロゴロできる。一方のママは、朝ご飯の片付け、ベッドなおし、掃除をして、やっと仕事に行く。夜も、おかたづけ、せんたく、アイロンをかけて、朝ご飯の用意を1人でこなす。

ある日、「ぶたさんたちのおせわはもうこりごり!」というメモを残してママはいなくなった。ここから、しかたないと自分たちで生活をするが、悲惨な暮らしになる。
ある晩、すっかり豚になってしまった3人の元にママが帰ってくる。3人、いや3匹は頭を下げて謝る。そして、協力し合って生きていくというお話だ。
各ページの絵にある隠されたいくつもの仕掛けを見つけるのも楽しい。訳者あとがきで記されているので絵を読むことも味わってほしい。

「ありがたい」気持ちは、今ここに有ることで幸せを感じられる。「あたりまえ」の気持ちは、あることが当然だから、無くなって始めてその存在に気づくのだ。どうやら、「有る」に気づくことは、時々強く意識しなければならないようだ。
表紙は、ママが3人をおんぶするという風刺画になっている。1人で3人をおんぶするなど、どれだけ悲しいかと思える情景を、額仕立てになった地色のピンクとレモンイエローが自省の失笑を優しく包んでくれ、画家のすごさを感じる絵本。あたりまえにあふれた職場に効く絵本だ。

そして、この度、私もこの場という「有る」をいただき、働く人が輝く職場づくりの役に立つことを願った『絵本はマネジメントの教科書』を上梓することになった。連載に感謝しかない。ありがとうございます。

『おんぶはこりごり』
作・絵:アンソニー・ブラウン
訳:藤本朝巳
出版社:平凡社
発行:2005年

「絵本に学ぶ仕事術®」   Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.145(2023年7月号)

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プロフィール

三宅 未穂子(みやけ みほこ) 
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

会社概要 - 社員研修プログラムなら、有限会社ウーヴルへ
Overview 会社概要 有限会社ウーヴルの会社概要をご紹介いたします。 代表挨拶 社名であるoeuvreと

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