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医療法人と税金 法人化のメリット⑤

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

心理的デメリットも色々とあるかもしれませんが、主に2つが挙げられると思います。
①利益が上がっても直ぐには役員報酬(儲け)に反映しない 
②保健所への事業報告書の提出
です。

事業年度の途中で思いがけず、売上が増え、多額の利益が出たとしても、それをそのまま院長等(理事)の役員報酬の増額に繋げることはできません。役員報酬の改定は、随時行うことができず、原則として社員総会にて決定を行うことになります。一般法人と同様に税務署に事前に届けていない役員(理事)賞与は、損金に算入することができません。
また、医療法人は毎年、事業報告書を保健所に提出が必要です。診療所の場合は、役員報酬や給与の金額等の詳細な情報の提供は必要ありませんが、どれくらいの利益が出ているかは、その事業報告書を見れば一目瞭然です。しかも、この事業報告書は誰でもネット等を通して閲覧可能です。私の知り合いの保険営業マンは、この事業報告書を閲覧して、利益が出ていそうな医療法人に生命保険の営業を行っていました。

ある内科の先生は、事業報告書を閲覧して、近隣の診療所の営業状態を確認して、「なんで、あの〇〇内科は、いつも駐車場に車が少ないのに、こんなに利益がでているんだろう。」とか「なの××病院は、現在3代目の歴史ある病院なのに、利益が溜まってないんだろう。」なんて考えているようです。最近、事業報告書の閲覧を行っている先生は、結構多いように見受けられます。

医療法人の設立後は、通常、厚生局に保険医療機関の申請を行います。その際に、同時に行うのが、施設基準の届け出です。これにより、点数の加算が可能となります。例えば診療を受けた際に領収書と一緒に診療の内容を記載した明細を受け取ることが増えたと思います。明細を出すことによって、点数が加算され、医療機関の収入が増えるのです。同じ内科の診療所でも、登録している施設基準は様々です。面倒かもしれませんが、先生方の病院・診療所も施設基準の見直しを行って、売上の増加に繋げてはいかかでしょうか。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.147(2023年9月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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