ビジネス徒然草 ■アネーラ税理士法人 統括 藤本 周二
私は小さな会計事務所を経営しています。また、仕事柄多くの会社を見てきています。会社はきっちり努力していけばきっちり成長するものと思います。成長している会社は肌感覚でも半数以上はありますのできっちり努力すれば成長確率は50%以上です。
ではどのような場合に成長が止まる、あるいは衰退していくのか。それは表題の比べてはいけないものを比べてしまう事が1つの例かと思います。
例えば、あるベテラン従業員がとても仕事はできるが会社の重要な決まり事を守らないとします。中小企業でかなりの売上の数字をそのベテラン従業員が持っていると仮定します。その場合に、重要な規則違反と言う事でそのベテラン従業員を処分できるでしょうか。
もちろん規則違反の程度が関係するとは思います。ただ、あまり数字を持っていない従業員であれば懲戒対象であるような事案と仮定して、その場合にベテラン従業員を懲戒対象にできるでしょうか?
実はこのような場合に懲戒対象にしたとすると、仮に退職すれば売り上げは大幅に減少してむしろ整理解雇しなければならなくなったりする恐れがあります。そこで、多くの会社は従業員を守るためと称してベテラン従業員を懲戒の対象にはしないという判断をします。経営者にとって苦渋の決断と言う事が言えます。その結果、ベテラン従業員の会社規程違反は続き結局会社の成長は止まる可能性が高いです。
この事例を根本的に考えてみます。この場合、経営者はベテラン従業員の売上と会社の規則を比較考量しています。つまり、売上と規則を比べています。本来比べられないものを比べていると言えます。そして、売り上げを取る。つまり、会社での決まり事を断念する。このようにすると、他の従業員は会社に対する信頼性をなくします。会社の成長も止まる確率が高いです。一方、ベテラン従業員を懲戒対象にして仮に退職されてしまい売り上げも大幅に減少したとします。それは会社全員で乗り越えられるべきものでなければならないし、乗り越えられると思います。もし、乗り越えられなければ会社の組織にそもそも問題があったと言う事ではないかと思います。
このような比べていけないものを比べて大切なことをないがしろにしている会社がかなりあると思います。今現実にも起きているかもしれません。
最後に1つ述べます。そのような規則を守らないベテラン従業員を生み出したのは経営者のあなたです。皆さんはどう思われますか?
ビジネス徒然草 Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.144(2023年6月号)
プロフィール
藤本 周二(ふじもと・しゅうじ) 【公認会計士】
アネーラ税理士法人 統括・東京事務所代表
1959年12月生まれ、福岡市出身、中央大学法学部卒。98年12月藤本公認会計士事務所を設立、所長に就任。2009年8月にエスペランサ税理士法人を設立し、理事長に就任。12年1月エスペランサコンサルティング株式会社、15年3月九州M&Aサポート株式会社、20年12月九州有限責任監査法人を設立。19年エスペランサ税理士法人をアネーラ税理士法人に改称。
信条:至誠天に通ず
著書:『社長の品格』(海鳥社刊)
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