弁理士よもやま話 ■加藤合同国際特許事務所 会長 加藤 久
10月は9月に引き続き京都に行きました。一泊目は、HOTEL THE MITSUI KYOTO、二泊目と三泊目は、九月と同じウェスティン都ホテル、四泊目はザ・プリンス 京都宝ヶ池と、いわゆるホテルホッピングを経験しました。
紅葉にはまだ早かったのですが、ゆっくりと流れる時間の中で、多くの自然に触れ、現在検討しているぼんやりしていたビジネススキームを、明確なものにすることができました。
泊まったホテルで特筆すべきは、「HOTEL THE MITSUI KYOTO 」です。このホテルは、 二条城を臨む三井家ゆかりの地に、2年前に誕生したもので、選びぬかれた天然の素材と卓越した工藝技術でつくりあげられたホテルです。
一言で言えばホテルとして完ぺきといってもよいと思います。私が今まで泊まったどのホテルより素晴らしいと感じました。このホテルの良さを味わうには、単に宿泊してすぐに帰るのではなく、少なくとも2泊はしたいところです。私は朝食を含め一円も支払っておりませんが、Booking.Comで調べたところ、なんと1泊126,500円の部屋でした。
このような環境の中に身を置くと、自然と自分の身も心もその環境に同化していくのがわかります。その一つが朝食です。いつもなら十分とかからず終わる朝食が、優に一時間はかけ、ゆっくり味わうことができます。ホテルの方の動きも適度なスピードでゆったりとしており、日常では考えられない程ゆっくりと料理を噛みしめる自分がいることに気づきます。至福のひと時です。
隣接する二条城は、江戸幕府初代将軍徳川家康が天皇の住む京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所とするために築城したものです。二条城の庭園をあるきながら、天皇や将軍、また三井家の当主と自分とはどちらら幸せだろうかとの思いが頭をよぎりました。
権力や財力は比ぶべきもないところでありますが、こと「幸せ」ということになると、どうもそうではないように思えました。ひょっとしたら私の勝ちかもしれないなと。絶対的幸福感というか、こうあれば「幸せ」であるなどということはあるはずもなく、幸せとは心が満ち足りていることであり、ある状態から望む状態に変化したときに刹那的に感じることでありましょうから、絶対的な権力と無限の財力をもっていたとしても、その時に感じることは「幸せ」の感覚とは全く異なることであろうと思います。
どのような権力者も人の十倍生きることはできません。どんな天才でも、巨万の富をもっていても、死ねば、すべてが唯の歴史の一ページとなり、本人が幸せを感じることはできなくなります。
現状に甘んずることなく、気高い志をもち、そのことに挑戦し続けることができるならば、天皇や将軍、また三井家の当主よりも「幸せ」になることができるのではないでしょうか。
そんな妄想に浸っていると、岡倉天心「茶の本」の一節、「まあ、茶でも一口すすろうではないか。はかないことを夢に見て、美しい取りとめのないことをあれやこれやと考えようではないか。」が浮かびました。
幸せとは、まさに一服の茶をすするようなものかもしれませんね。
高級ホテルにただで泊まり、非日常を体験したい人は、加藤までご連絡ください。
弁理士よもやま話 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.137(2022年11月号)
プロフィール
加藤 久(かとう ひさし)
加藤合同国際特許事務所 会長
1954年福岡県生まれ。佐賀大学理工学部卒業後、福岡市役所に勤務。87年弁理士試験合格、
94年加藤特許事務所(現:加藤合同国際特許事務所)設立。2014年「知財功労賞 特許庁長官表彰」受賞、20年会長就任。
得意な技術分野:電気、機械、情報通信、ソフトウェア、農業資材、土木建設、無機材料、日用品など。
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