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江戸幕府を救った天才勘定奉行の生涯

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Books ■株式会社梓書院 取締役  前田 司

『勘定奉行 荻原重秀の生涯』
 村井淳志 著 / 集英社新書 700円+税

1978年のIMFによる米ドルの金本位制廃止に先んじること、約300年。金属貨幣の限界にいち早く気づき、「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以ってこれに代えるといえども、まさに行うべし」と、日本弊制史上、初の大規模な貨幣改鋳を行った人物がいた。不世出の経済通、勘定奉行・荻原重秀である。

重秀は、下級役人の出自ながら、その才覚と功績から、異例の若さで勘定奉行まで大出世した人物だ。重秀の主だった功績だけ見てみても、各種検地、代官粛清、佐渡金山の立て直し、長崎貿易の改革、東大寺大仏殿の再興、災害賦課金の徴収など、実に多彩だ。なかでも、重秀最大の功績であり、その先見性と経済眼が際立っているのが、貨幣改鋳である。

重秀が行なった、金の含有率を下げながら、同じ価値の貨幣として流通することを強制させる貨幣改鋳は、実質上の名目貨幣化である。金の産出量に経済が左右されることの限界をいち早く察して行った貨幣改鋳は、幕府の財政再建のための画期的な一手であり、重秀によって幕府の財政は救われたといっても過言ではなかった。

しかし、幕府にとって大恩人であるはずの重秀であるが、重秀を憎く思う新井白石による悪評の流布によって、その評価が正しく伝わっていない。重秀の功績を正しく伝えようと情熱を注いだ著者、渾身の1冊。

Books  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.131(2022年5月号)

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プロフィール

前田 司(まえだ つかさ) 
株式会社梓書院 取締役

福岡市出身、福岡大学人文学部卒。2009年福岡の出版社・株式会社梓書院入社、取締役部長を務める。漫画原作家。踊る編集者としてラテンダンス(カシーノ)の普及にも勤しむ。

九州・福岡の老舗出版(書籍・マンガ・電子書籍)企業:梓書院
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