神社訪ねある記 ■有限会社タオコーポレーション 代表取締役 箱嶌八郎
初詣押されて掴む鈴の綱
毎年、お正月の3ケ日の間に地元の神社にお参りするのを初詣と言うようです。もともとは我々の住まいの範囲をお守りくださっている近所の神様、産土守(うぶすながみ)様にまずお参りしたようです。最近は遠方の有名大神社に初詣なさる方が増え、賽銭箱までじっと辛抱の牛歩の長い列が続いています。
日本には八百万(やおよろず)の神様がいらっしゃって、どの神様を信仰してもよい、本当の意味の信教の自由が古代から保証されているようです。八幡宮とか神社とかあるいは大社とかの呼称があるようですが、素人にはどれもみんな神様である。規模の大小にかかわらず心の守り神と思ってよいことになっています。住まいが変わればその場所の守り神を産土神として勝手に決めてもだれにも文句は言われないことのようです。
神様方の地区割りは流れる川筋が境のようです。川を境に商店街とか住宅街とかの区分が以前ははっきりしていました。風水的には 龍脈(りゅうみやく)という地電流が川に突き当たっていったんストップするからと考えられています。
福岡市は那珂川によって西は武家町の福岡、東は商人町の博多とに江戸期には分かれていました。それぞれの区域の神様も那珂川より東は櫛田神社、住吉神社、箱崎八幡宮、やや離れては宮地岳さんや宗像神社。西では室見川まで警固神社、鳥飼八幡宮、愛宕神社そして室見河畔の飯盛神社などでしょうか。水城の先に太宰府天満宮、博多湾を隔てて北に志賀海神社などが私の知っている範囲での神様方のテリトリーのようです。
3ケ日にはどこの神社も初詣客で一杯、参殿の賽銭箱にコインを投じ鈴を鳴らし2礼2拍手をするために長蛇の列である。1時間待ちはざらで、足弱の老人たちは諦めて遠くから遙拝して帰る。あるいは4日に参るようになる。神さまはお許したまうと思います。
何故こんなに神社に人が集まるのか。願い事が多いからでしょう。頭をたれ深く念ずればお賽銭の多寡にかかわらず、神は願いを叶えたもう。何故、願い事が叶うのだろうか。それは多くの神社が風水の龍穴(りゅうけつ)に建てられているからだと思われます。
龍穴とは土圧のかかる高い山から流れ出ている龍脈(りゅうみゃく)がポッと地上にあふれ出る場所、パワースポットのこと。龍脈を地電流と言うこともあります。山脈に埋もれた鉱物、水晶や石英が土圧によって擦れて発する安定した地電流パワーと言うことができるようです。
龍穴から出るパワーはストレスをなくし人々の願望達成を増幅してくれる、ストレスがないので心がフリーになり快いのでしょう。神社の境内の樹木もストレスを受けないので長寿で巨木に成長します。古人はこのことを知っていて其処に神社を建てたのではないでしょうか。この龍脈の根源は世界的にはエベレスト、日本では富士山だそうです。
大神社の荘厳な建物の前では圧倒され、凡人は萎縮してしまう。むしろ、通りかかった山道で杉木立や桜並木の林の中にひっそりと建つ鎮守の杜の神様に心を引かれ、車を止め、緑陰の小道に踏み入らせてもらうのも魅力的です。村のお祖父さん、お祖母さんに挨拶をするように鈴の引き綱を揺らせて柏手(かしわで)を打つとなんとも心がやわらぎます。古びた木造りの神殿から「まあ座れや。退屈じゃったけん、お前の話聞いてやろうじゃないか」と白髪の神様が杖ついてお見えになり、大きな耳を傾けうなずきながら悩み事を聞いていただける。こんなご経験をなさったお方も多数いらっしゃるのではないでしょうか。
規模の大小にかかわらず、神社を探訪し隠された魅力を私見を交えてレポートさせていただければと思っています。
神社訪ねある記 Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.152(2024年2月号)
著者:箱嶌八郎(成風) 氏
有限会社タオコーポレーション・風水家相タオ設計工房主宰。
二級建築士、インテリアコーディネーター、宅地建物取引主任者。長年にわたり四柱推命学・気学・家相・風水・断易を研究。
著書に『風水家相と家づくり』(共著、平成28年)、『鳥山二郎・鑑定実録 されど風水』(令和4年)など。「第3回子母沢寛・愛猿記文学賞大賞」受賞(令和4年)
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