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早良区飯盛神社

繁栄の法則

神社訪ねある記  ■箱嶌 八郎

飯盛神社(福岡市早良区)

1月23日、福岡市の上空にマイナス12度の寒気団が大陸から張り出してきた。その日、夕方から強い寒風と粉雪がちらつき始めた。明朝九時半に雑誌編集社の宇野さんご夫婦と飯盛神社を訪問する予定である。「あの山道が凍結したら車では登れんぞ」と不安だった。翌朝、待ち合わせした宇野氏が「まあ、行ってみますか」と雪をかぶりながら車を発進させた。路肩に雪が残る県道 558 号線を南に走り、室見川にかかる田村大橋を渡って飯盛山の坂道をおずおず登った。滑ることなくなんとか神社の駐車場に車を停めた。

根元に雪の残った杉木立の中に神殿が見える。近づくと巨大な赤鬼面が目をむき牙をとがらせ大鳥居に喰らいついている。その先に高さ4mはあるだろうか、白塗りのお多福面が紅い唇を大きく開けて笑っている。拝殿にはこの口をくぐらねば参れない。人生ときには女性に食われてみるもんだと言う教えだろうか、お多福に呑まれてやっとお詣りができた。

社務所は2月3日の節分追儺会(ついなえ)の準備で忙しそうであった。その中、開祖から四九代目の牛尾宮司に時間を割いてお話を聞かせていただいた。1,200年近く続いている古社である。「ええ、そんなに古く」と聞く方が驚いた。お話とユーモアには定評のある牛尾宮司は「ハハハ」と笑って「そうです、貞観元(859)年、平安前期に清和天皇の勅願で創建されました」と、かるく言われた。「背後の飯盛山からの強い気脈がお社(やしろ)の建つここにあふれ出て竜眼(りゅうがん)という穴(けつ)を結んでパワースポットになっています。麓には室見川が流れ、気を抱き止め、四神相応(しじんそうおう)の風水の地ですよ。ストレスがないので森の木々もどんどん生長するんですわ」

「境内に入ると清々しい気にうたれるのもそのせいですね。来年、後期高齢者入りとお聞きしました宮司さんも見るからにご壮健で、まだ成長過程でいらっしゃる。イヤー、羨ましい。大地から強い気をもらってござるんですね。50代目にあたるご子息の若禰宜さんと最近ある地鎮祭でお会いしました。長身で男前で祝詞(のりと)を上げられる声がまた張りがあって素晴らしいのも風水の力でしょうね」。
「私に似ずに良かったねえ」とジョークを飛ばされた。

毎年3月下旬に開催される春分の節会小笠原流草鹿式
(しゅんぶんのせつえおがさわらりゅうくさじししき)

イザナミの命(みこと)や竜宮城の乙姫様の玉依姫(たまよりひめ)そして八幡神の応神天皇が祀(まつ)られておられるそうで、武備にも疎かではない弓矢の神社でもある。3月17日に歩射祭(ほしゃさい)があり草鹿の的を弓で射る。そして何より10月9日に行われる流鏑馬(やぶさめ)の奉納が圧巻だ。疾駆する馬上から弓で的に矢を射る。鎌倉武士の勇姿を彷彿とさせるイベントだ。福岡市の無形民俗文化財にも登録され全国から見物人が集まる。馬のひずめの音、射放った弓弦(ゆんずる)の響き、矢が的を割る音、観衆の大喝采、これは見物(みもの)だ。是非、拝観したい。また、縄文、弥生の古代から伝わった粥占(かゆうら)は全国的にも珍しいユニークな神事として飯盛神社で行われる。

2月14日にお粥を炊いて木箱に盛り神前に備え3月1日に取り出し、お粥に発生したカビの色や形で今年の稲の作柄を占う。日銀の経済観測がすでに行われていたのだ。早良郡一円の稲作民の依り処であったろう。県の無形民谷文化財に指定されている。

神社のすこし山手に文殊堂がある。飯盛山からの清らかな伏流水が「知恵の水」となって湧き出ている。受験生へのお守り水を頂きに来る人が絶えないそうだ。こんな多彩な行事を有した神社も珍しい。風水の宝の山である。面談中もひっきりなしに電話が入る。宮司さんはご多忙なのだ、その中、お話をしていただき、恐縮し、お礼を言って社務所を出た。日は射してきたが昨夜来の寒気が参道に吹き溜まっていて足から冷えてくる。「どこかで温かいものを」と、県道沿いの食堂に飛び込んだ。早速出された熱々のうどんを食って体中がほっかりしてきた。

「また来たいですね。3月の歩射祭には行きますよ」宇野さんご夫婦がうなずきあった。

  煮込みうどん 湯気の向こうの 笑顔かな

山襞(やまひだ)にうっすらと雪の残る飯盛山を仰ぎ見て車に乗りこんだ。

■飯盛神社
創建  貞観元年(859年)
御祭神 伊弉冉尊(いざなみのみこと)
    五十猛尊(いたけるのみこと)
    玉依毘賣命(たまよりひめのみこと)
    品陀和気命(ほんだわけのみこと)
住所  福岡県福岡市西区大字飯盛609番地
URL  http://www.iimorijinja.jp/

神社訪ねある記  Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.153(2024年3月号)

著者:箱嶌八郎(成風) 氏
有限会社タオコーポレーション・風水家相タオ設計工房主宰。
福岡市生まれ。当仁小、中学、修猷館高、早大卒。
西日本新聞TNC文化サークル・風水教室講師・もの書き屋・エッセイスト。
・第23回森鴎外記念北九州市自分史 文学賞
・第50回福岡市文学賞
・第3回子母沢寛文学賞「愛猿記賞」 等々大賞受賞。
著作:「されど風水」あり。

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