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負けを引きずらない徳川家康の組織運営術

繁栄の法則

繁栄の法則  徳川家康の知恵

武田軍に完敗して城に帰った家康の行動とは

人は失敗すれば、落ち込み、それを引きずってしまいます。すると、さらに負の連鎖が起き、立て直すのにかなりのエネルギーを要します。ビジネスにおいて思い通りにいかないことは日常茶飯事。特に、未知の事への挑戦や難しい案件の処理など、失敗はつきものです。
企業や組織のトップは、日常的に様々な失敗への対応を求められます。
失敗したり、難問にぶつかったりした時、皆さんはどうしますか?じっと嵐が過ぎるのを、物陰に隠れて待ちますか?

今年の大河ドラマの主人公・徳川家康もたくさんの失敗や苦難にあい、それを乗り越え天下人となりました。家康が様々な障害を乗り越えた事例は、今の私たちにとっても参考になるものがあります。
例えば、三方ヶ原の戦い。
1573年(元亀3)、静岡県の三方ヶ原町付近で徳川家康は武田信玄と激突します。この時、家康は信玄と敵対する織田信長と同盟を結んでいました。信玄は、信長を倒すため都に向かう途中、徳川領内を通過します。
この時、家康には浜松城に籠って信玄が通り過ぎるのを待つか、信玄と一戦交えるかの選択肢がありました。武田軍3万に対し徳川軍は1万5,000程。戦力の差は歴然です。当然、重臣たちは戦いを避け籠城するよう説きますが、若かった家康は攻撃を命じました。家康は信長と同盟を結んでいる以上、目の前を通る信玄をそのまま見過ごすことはできないと判断したのかもしれませんが、結果は、武田軍に大敗し浜松城に逃げ帰ります。

三方ヶ原の戦いは、家康が惨敗したことばかりが強調されがちですが、家康の凄さはここからです。
城に帰った家康は、城門を開け放ち、かがり火を炊かせます。城に帰ってくる兵たちを迎え入れるためでもありますが、武田軍から追撃される危険もあります。
家康はなぜ、このような危険な決断を下したのか。

組織には勢いが必要

徳川方の兵士は武田軍に完敗し自信を失っています。家康が城門を閉じ、城のなかに籠ってしまったら、徳川軍は負けたままの心理状態を引きずり士気は低下してしまいます。これでは、信玄が攻めてきても戦えません。
家康は城門を開け、かがり火を炊くことでまだまだ戦う意志と力があることを内外に示したと考えられます。一説によると、家康は高いびきをかいて寝てしまったとも。こうした家康の決断によって兵士たちの動揺はおさまり自信を取り戻し士気も高まります。
一方、武田軍は堂々と開け放たれた城門に戸惑いを覚えます。「家康のことだから、何か罠を仕掛けているかもしれない。うかつに攻撃するのは危険だ」と考え、追撃しづらいわけです。結局、武田軍は城への総攻撃を諦めました。
家康は負けを引きずることなく、自分の態度で場内の雰囲気をプラスに転じ、危機を乗り越えたのです。

家康の戦術は、「空城の計(からじょうのけい)」と呼ばれるものだと思われます。中国の『三国志』では、魏に野戦で敗れた蜀の諸葛亮孔明が、攻めてくる魏に対し城の門を開け放ち魏軍を誘っているように仕向けると、警戒した魏軍は城を攻めることなく退却したという古事を家康は学んでいたのではないでしょうか。信玄が戦略家だったために成功した戦術ともいえます。

組織には勢いが必要です。
危機に直面した時、組織全体が不安感に襲われていては、委縮して十分な力を発揮できません。組織のメンバーはトップの背中を見つめているものです。トップが不安におびえていないか、勝つ自信を持っているか、そうしたことを敏感に察知します。
ですから、部下が自信を無くし、不安を感じるなど組織の士気が停滞しているときは、トップとして自信のある態度で、明るく振る舞うことが大事だといえます。

企業経営でも失敗した時に落ち込むことなく、次の成功のための方策を早く打ち出していくことは、社内の雰囲気を明るくし組織に勢いを与えます。
苦しい時こそ、トップには自信に満ちた明るい態度でいることを心がけましょう。

➤経営に生かすポイント

●失敗したら次の策を考える
●トップの表情や態度は組織の士気に影響を与えることを自覚する
●歴史に学ぶ

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<プロフィール>
宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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