経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

カネの払い方、渡し方にもご注意を

繁栄の法則

社長の知恵

以前、「カネは使い方が難しい」と書きました。カネの稼ぎ方も大事ですが、それをどう使うかで使う人の評価も変わるからです。カネは稼ぎ方以上に使い方を見られことの方が多いように思います。
身近なところでは、社長や上司が部下を食事に誘うような場合もそうですね。食事をとりながら仕事やプライベートの話などをします。薫陶を受ける場合もあるでしょうし、上司の体験談など貴重な話を聞くこともあります。そうした上司の心遣いに感謝しながら食事を終えて、上司が支払いを済ませようとします。
ところが、この時、会社宛の領収書を受け取っている姿を見ると、「高い店に連れてきてもらったが、結局、会社の経費で落とすのか」と少し複雑な気にもなります。

これが上司のポケットマネーであれば、有り難さは倍増するのが人情というものではないでしょうか。知っている店であれば、後日支払いを済ませるという方法もありますが、人にご馳走するという立場になると、案外、「自分は良いことをしている」と思い相手の気持ちに対する気配りが抜けてしまう傾向にあります。

人にカネをあげる場合は、もっと注意が必要です。
例えば、繁忙期で残業が続いている部署があります。部長以下、連日、遅くまで残って資料作成などをしています。そこで、社長は残業をしている部署に顔を出し、財布からカネを出して、「遅くまでご苦労様。皆で晩御飯でも食べてこい」といって部長に渡します。それほど珍しくはない光景ですね。社員の労をねぎらおうとした優しい社長です。部長や社員も有り難く感じるでしょう。

一方、皆も見ていない場所で「遅くまでご苦労様。頑張ってくれている皆の労をねぎらってくれないか。私が出したということは言わなくていい。君のポケットマネーということにしておいてくれ」と部長に渡したらどうでしょうか。

やっていることは、それほど変わりませんが、効果はかなり違ってきます。皆が見ていない場所で渡すのは、部長に花を持たせる意味もあります。

カネをもらうという行為は、場合によっては、受け取る側が卑屈に感じたり、有難さよりも別の感情を持っていたりするのに断れないことがありますよね。こうした状況や関係でカネを渡しても、有難く思ってはくれないこともあります。場合によっては部長から拒否され、皆が気まずい空気に包まれるかもしれません。

人がいない場所で、しかも、皆のためにという渡し方をすれば、部長も受け取りやすいでしょう。なぜ、社長がそこまで気を配るべきなのかと思われるかもしれませんが、情は理屈を超え人を動かす場合があるからだといえます。

<プロフィール>
宇野 秀史(うの ひでふみ)  ビス・ナビ編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)

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