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『沖縄文化論 忘れられた日本』

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Books ■株式会社梓書院 取締役  前田 司

1972年。沖縄返還の年に1冊の本が再版された。稀代の芸術家・岡本太郎が沖縄に魅せられて記した本書である。初版は「忘れられた日本 沖縄文化論」と主題と副題が逆であり、1961年に出版された本書は、毎日出版文化賞を受賞している。出版のきっかけは、岡本太郎が沖縄に出向く際、「せっかく行かれるなら、沖縄の現状のルポを書いてください」と出版社に頼まれたことだった。しかし、とても現状のルポなんかでは収まらない想いがあふれ出し、現代まで読み継がれる名著となった。

岡本太郎は、沖縄のなかに日本の古層・源流を感じたという。その大きなきっかけとなったのが、御嶽(うたき)と呼ばれる聖域のなかでも、最も神聖視されている久高島の大御嶽を案内されたことだった。岡本太郎は案内された御嶽を見回して驚愕した。なにもないのだ。祭壇はおろか、巨石や巨木のようなご神体も、特別な景観も、なんにもない。本当にただ草木が生い茂るだけの空間であったのだ。この空間を聖域として神聖視し続け、文化として脈々と受け継がれていることに、ふるえあがったという。

このなにもない御嶽は、琉球王朝時代につくられた人工的な文化財よりも、いっそう「実在的」であり、そこに日本人の精神の源流を見たという。沖縄は遠く離れた異国という感覚は今も昔も、あまり変わっていないかもしれない。しかし、沖縄には日本人が忘れてしまった「日本らしさ」、そして日本の精神文化の原点があるのではないか。岡本太郎の目を通して沖縄にふれることで、忘れていた「なにか」を発見することができるかもしれない。

Books  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.106(2020年4月号)

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プロフィール

前田 司(まえだ つかさ) 
株式会社梓書院 取締役

福岡市出身、福岡大学人文学部卒。2009年福岡の出版社・株式会社梓書院入社、取締役部長を務める。漫画原作家。踊る編集者としてラテンダンス(カシーノ)の普及にも勤しむ。

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