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相続財産とみなし相続財産

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一


相続税の申告には、被相続人が所有していた「相続財産」と被相続人が亡くなったことにより、相続人が受け取ることになった「みなし相続財産」を含めることになります。
相続財産とは、相続によって相続人に引き継がれることになる被相続人の権利と義務のことをいいます。亡くなった方が持っているプラスの財産とマイナスの財産が全て相続財産となります。いわゆる遺産というものです。
相続財産は、形があるもの(見えるもの)ばかりではありません。私が数年前に行った相続税の申告では、著作権を相続財産として申告しました。余談ですが、著作権の評価は税理士が行うものではなく、著作権の評価を行う専門機関に費用を支払ってやってもらうことになります。私が関わったこの案件では、意外にもかなり低い評価額で、相続税で支払った税金なんかは、亡くなった後に出版される書籍の印税により数か月で回収できるほどの評価でした。専門機関が行う評価ですから、税務署も何も言えません。有難い制度かもしれませんね。

さて、相続財産に似て非なるものに、みなし相続財産というものがあります。みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではありませんが、相続税を計算する際には相続財産とみなして相続税の計算を行います。代表的なものとしては、生命保険金と死亡退職金です。これらの財産は、被相続人が所有していた財産ではありませんが、被相続人が亡くなったことを理由に相続人の財産になります。なので、民法上の相続財産ではありませんが、相続税が課税されることになるのです。

通常、相続放棄をすると相続財産を受け取ることが出来なくなりますが、生命保険金や死亡退職金は、相続人固有の財産として受け取ることが可能です。しかし、その場合には、相続人とならないため、生命保険金と死亡退職金の非課税枠の利用はできません。

次回は、もう少しこの「みなし相続財産」についてみていきます。相続税対策が可能となる場合もありますよ。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.141(2023年3月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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