会社と労務管理は表裏一体 ■中原労務管理事務所 所長 中原 正晴
副業・兼業における労働者のメリット及び留意点について、前回お話させていただきました。会社のメリットと留意すべき点についてみてみましょう。
会社のメリットとしては、労働者の自律性や自主性、スキルアップを促すことにより、優秀な人材の確保、また社外からの情報や知識・人脈を取り入れることで、会社の発展に繋がる可能性が広がることがあげられます。
副業・兼業に関する裁判例においては、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するか、基本的には労働者の自由であるとされていることから、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが適当だといわれていますが、副業・兼業は長時間労働につながるリスクがあります。ガイドラインでは、会社が労働者の副業の状況や健康状態を適切に把握できるよう、副業・兼業を行う際の取り扱いについて就業規則を整備するよう促しています。
また、令和2年9月より、副業をする労働者に労災が発生した場合、全ての勤務先の賃金額をもとに休業補償がされることとなり、会社は労働者の副業状況の把握が必要になっています。
では、副業・兼業を進めるうえで会社はどういった対応が必要になるのでしょうか。就業規則の見直しや副業・兼業に関する届出の整備、副業・兼業に関するルールの策定等が必要になるでしょう。また労働者から申告してもらうこと等により、副業・兼業の内容を定期的に確認し、労働時間の管理や健康管理に注意することが必要になります。
秘密保持義務や競合避止義務、健康保持のための自己管理、誠実義務など確保していくために「副業・兼業に関する合意書」を定期的に交わし、確認していくことも大切です。
副業・兼業を進める際には、十分に検討し、労働者と会社、お互いが納得して進めることができるようコミュニケーションをとり、書面を交わしていくことが重要です。
会社と労務管理は表裏一体 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.115(2021年1月号)
プロフィール
中原 正晴(なかはら まさはる) 【社会保険労務士】
中原労務管理事務所 所長
福岡県糸島出身。昭和51年2月生まれ
某社労士法人事務所に6年間勤務後、平成23年4月に中原労務管理事務所設立。現在、行政協力をしつつ、リスク回避型就業規則の提案・助成金申請代行・創業からの手続代行を含む労務管理に関する相談の3本柱をメインに社会保険労務士として活動中。
コメント