絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
「ノーマライゼーションの理念を尊重し視覚障害者の尊厳を守りその自立と社会参加を推進する活動を進めていく」を理念に掲げる団体が北九州にある。視覚に困難な状況を抱える人の就労準備のための機関だ。私はあんま・針・灸部門で生計を立てる人たちのお客様満足を高めるために月一回訪問している。
視覚障害といっても程度はいろいろだ。生まれつきの人も、途中から視力を失った人もいるため、世界の理解度は一人一人違う。例えば、虹をある年齢まで見たことのある人と、一度も見たことがない人では、晴眼者のように誰もが同じように理解することは困難である。
このように、「言葉の解釈は違う!」は前提なので、多面的に理解できる物語・ナラティブにして伝える努力をしている。これは、彼らたちに限ったことではない。見えている方がよほどに共通理解は難しい場合も多い。
その彼らたちに今日も一冊携えた。
なぜかそのまわりだけいつも温かい木を発見した植物学者の話だ。
一年中花が咲きみだれ動物たちも集まるその場所。深い森で発見した植物学者は歓喜する。数日間その木と動物たちと暮らすうちに、この木が千年以上ここにあり続けることに比べれば、発見で得られる瞬き程の自分の名声などどんな意味があるのかと気づき、そっとその場を離れ生涯公表しなかった。そして彼はまるであたたかい木のように生きた。という話だ。
その温かな空気を纏ったような優しい緑の色合いが印象的な絵。水彩のにじみが美しい絵本だ。彼らたちには見ることはできない。しかし十分に文脈から伝わった気がする。
「この木は自分のことだ。穏やかな心でいつもいたい」「まわりをあたためたい」「自分の中にあたたかい木を取り込み、持ち続けて生きたことに感動した」「こうした素敵な出会いこそが人を勇気づける」「いつでも思い出せるあたたかなものが心にあることが幸せだ」など、いろいろな感想を得た。あたたかな接客とは、自分から始まることをきっと全員が同じように理解できたように思う。
あたたかさ。これだけで人は元気になれる。彼らたちは、この診療場所を訪れる患者様の日ごろの疲れや体の痛みを、研ぎ澄まされた触覚と、訓練を重ねた施術の技と、彼らたち自身から発せられるあたたかい空気で、きっと和らげていくだろう。
『あたたかい木』
作: くすのき しげのり
絵: 松本春野
出版社: 星の環会
発行:2019年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.164(2025年2月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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